奇警きけい)” の例文
わたくしはその着眼の奇警きけいにして、その比喩の巧妙なるに驚かねばならない。その調しらべの豪放なることは杜樊川とはんせんを思わしめる。
枯葉の記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そうしてその鋭利な点はことごとく彼の迂濶な所から生み出されていた。言葉をえていうと、彼は迂濶の御蔭おかげ奇警きけいな事を云ったりたりした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と春子さんは殊更奇警きけいに出て、兄さんの注意を独占しようと努めた。お母さんの方へ向かせると、この際危い。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
逡巡しゅんじゅん」という漢語を奇警きけいに使って、しかもよく効果を納めている。芭蕉もよく漢語を使っているが、蕪村は一層奇警に、しかも効果的に慣用している。一例として
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
音なくして音を聴くべく、色なくして色を観るべし。此の如くして得来る者、必ず斬新ざんしん奇警きけい人を驚かすに足る者あり。俳句界においてこの人を求むるに蕪村一人あり。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
二三箇月の後に文章を作らしてみると、構想が奇警きけいで他人の真似のできないものがあった。二人は約束して五日目五日目に酒を飲むことにしたが、その時には必ず香奴を招いた。
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
論いささか奇警きけいに似たる感があるかもしれないが深く考察してみる時、この言必ずしも不当ではないと信ずる。今後の文明は平均、平等への文明である、そしてそれは自然律から生れている。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
秀吉の奇警きけい比喩ひゆに、信忠は思わず苦笑をもらした。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奇警きけいなる空想であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
自分でうそと知りつつ出鱈目でたらめいてもっともらしく述べるやつはなお不都合であるし、できるならば余り人の込み合わないうちで、閑静なひげを生やしたじいさんが奇警きけいな言葉で
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
意匠に勁健けいけんなるあり、優柔なるあり、壮大なるあり、細繊さいせんなるあり、雅樸がぼくなるあり、婉麗えんれいなるあり、幽遠ゆうえんなるあり、平易なるあり、荘重そうちょうなるあり、軽快なるあり、奇警きけいなるあり、淡泊たんぱくなるあり
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
主人はこの奇警きけい比喩ひゆを聞いて、おおいに感心したものらしく、久し振りでハハハと笑った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)