大欠伸おほあくび)” の例文
祖父ぢぢはわたくしの申したことが聞こえた顔もせず、筆を筆立へ納めて、大欠伸おほあくびをし、母に命じていた書物かきものを待たせて置いた小僧にやらせました。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
平次は煙草をポンと叩いて、天井を突き拔けるやうな大欠伸おほあくびをしました。岡つ引根性を無駄に刺戟されて飛んだ緊張が馬鹿々々しかつた樣子です。
しらけて、しばらく言葉ことば途絶とだえたうちに所在しよざいがないので、うたうたひの太夫たいふ退屈たいくつをしたとえてかほまへ行燈あんどう吸込すひこむやうな大欠伸おほあくびをしたから。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちや外套氏ぐわいたうし大欠伸おほあくびをしてきた。口髯くちひげ茶色ちやいろをした、けた人物じんぶつで、ズボンをはだけて、どつかと居直ゐなほつて
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
細つそりした肩、かたむきかけた月の影を長く引いて、哀れ深い姿ですが、八五郎はそれを見送つて大欠伸おほあくびを一つ、枕を引寄せて、又一と寢入りときめました。
くだん天守てんしゆむねちかい、五階目ごかいめあたりの端近はしぢかところて、かすみひつゝ大欠伸おほあくび坊主ばうずがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ガラツ八の八五郎は咽喉佛のどぼとけのみえるやうな大欠伸おほあくびをしました。