大字おおあざ)” の例文
それがほぼ今日の市町村の大字おおあざとなっている。大字を区分したものがあざであるが、これが以前よりはるかに少なくなっている。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
村松町より一里をへだつる中蒲原なかかんばら郡橋田村大字おおあざ西四つ屋、曹洞宗泉蔵寺大門先なる関谷安次宅地内に、数百年を経たる高さ五間、幹の周囲約一丈の大欅おおけやきあり。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
あちこち迷った末に、翁の選択はとうとう手近い川添かわぞえの娘に落ちた。川添家は同じ清武村の大字おおあざ今泉、小字こあざ岡にある翁の夫人の里方で、そこに仲平の従妹いとこが二人ある。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
Sという大字おおあざの連中は最初から組合の機能に疑問をいだいて加入せず、主として町の銀行から融通したが、それが最近頻々として差押処分を食っているという話になった。
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
大字おおあざ、九村社、五無格社、計十四社を滅却伐木して市鹿野いちがの大字の村社に合祀し、基本金一万円あるはずと称せしに、実際神林を伐り尽し、神殿を潰し、神田を売却して
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
根尾から大字おおあざ小鹿、松田、下大須しもおおす、上大須を過ぎ、明神山から屏風びょうぶ山を越えて、はじめて越前へ出るのであるが、そのあいだに上り下りの難所の多いことは言うまでもない。
くろん坊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
川上を見てきたかわずはまず岩村田いわむらだあたりから始めました。あの町の大字おおあざかねというところのかどに石があります。その石が、これより南、甲州街道と旅人に教えています。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうしないと、どこで何を騒いでるんだか一向わからないから——そこで、なにを隠そう、この僻村こそは、和蘭オランダユウトラクト在なになに郡大字おおあざ何とかドュウルンの部落である。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
現在、岡山県英田あいだ讃甘さぬも大字おおあざ宮本という所が、彼の生れた郷土である。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八幡村の大字おおあざ江曾原えそはらと申すところでございます」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
きぬた大字おおあざ岡本字下山、岩崎別邸。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
それが現在のいわゆる各大字おおあざ内の字になっているので、従前の村の小区劃とは喰いちがっている。土地によってはもっと小さな数多くの字があった。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うろ覚えの道を、医師がさきだちにて車のわだちを慕って来たのが、昼さえ人の足跡なき上野村大字おおあざ宇留野の山奥にて、宇留野原と称する所に一枚のむしろあり。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
今日の村の名または大字おおあざの名に、湯本ゆもと等の非常に多いのも、以前はユフの採取地として保護していた山野が、後に麻の畠作が進むとともに不用になり
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その町村の大字おおあざが多い町村と少ない所とあるが、明治十九年の表によるとだいたい十九万はある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もとは村かぎりの小さい氏神うじがみやしろにおいて生まれ、のちにおいおいと国の大神おおかみの、たがいに知らぬ信徒のあいだにもひろがったものと思うのだが、それにしては、その本元ほんもとの村や大字おおあざにおいて
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
岩手郡玉山村にも同じ大字おおあざあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)