トップ
>
夜霞
>
よがすみ
ふりがな文庫
“
夜霞
(
よがすみ
)” の例文
研
(
と
)
がれてきた夕月の下は、
藍
(
あお
)
いあおい
夜霞
(
よがすみ
)
だった。その遠くのほうで、木工助じじが歌うらしい、子守うたが聞こえていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜霞
(
よがすみ
)
のあるせいか、江戸川の
窪
(
くぼ
)
の向うに、いつもは近く見える
矢来
(
やらい
)
の
天文櫓
(
てんもんやぐら
)
の灯が、今夜は、海のあなたほど遠く見える。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
月はあるが、
月食
(
げっしょく
)
のような春のよい——たちこめている
夜霞
(
よがすみ
)
に、家も
灯
(
ともしび
)
も野も水も、おぼろおぼろとした夜であった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妖麗
(
ようれい
)
な
夜霞
(
よがすみ
)
をふいて、
三方
(
みかた
)
ヶ
原
(
はら
)
の
野末
(
のずえ
)
から
卵黄色
(
らんこうしょく
)
な
夕月
(
ゆうづき
)
がのっとあがった。
都田川
(
みやこだがわ
)
のながれは
刻々
(
こっこく
)
に水の色を
研
(
と
)
ぎかえてくる、——
藍
(
あい
)
、黒、金、
銀波
(
ぎんぱ
)
。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
夜霞
(
よがすみ
)
の底に、江戸川の流れと関口の人家の
燈
(
ひ
)
が、チラ、チラと見えるほか、何物もなく何らの音もない、真に
寂
(
せき
)
としたおぼろおぼろの夜と帰しました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
ここは
大山
(
だいせん
)
の麓といっていいほどだが、その大山の影も見えない
夜霞
(
よがすみ
)
が
館
(
たち
)
の灯から物音までも
朧
(
おぼろ
)
にしていて
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小野の里は、
夜霞
(
よがすみ
)
のあとになって行く。急に、彼女の理性がうごいた。あまり人里遠くなってもいけないと。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜霞
(
よがすみ
)
がたちこめていた。若葉の陰の月までが濡れている。四月九日の夜半、三条の大路に人影もない。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
という
櫓韻
(
ろいん
)
が大川の
夜霞
(
よがすみ
)
に遠くなって行った頃です——やがて入れちがいに、二人が去った納屋の中に、ぽっと明りの影が射して、男姿のお蝶が黙然と坐っていました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黒い
桜花
(
はな
)
の影が、障子に雲のような
斑
(
ふ
)
を映していた。
夜霞
(
よがすみ
)
のしっとりと感じられる遠くには、櫓の音がする。船唄がながれて行く。——内匠頭夫人は、独りで坐っていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平和な
夜霞
(
よがすみ
)
につつまれて、眠りに落ちていた村には、忽ち、
消魂
(
けたたま
)
しい
夜鶏
(
よどり
)
の啼き声が起り、牛が鳴き、馬がいななき、
老人
(
としより
)
や子どもの泣き
喚
(
わめ
)
くのが、手にとるように聞えだした。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、
夜霞
(
よがすみ
)
は白く曳いて、戦いのある世とも思えぬほど、静かな春の夜に入っていた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
声は、幾つも、方々から聞えて来て、
夜霞
(
よがすみ
)
の果てへ流れてゆく。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜霞
(
よがすみ
)
の小路の辻へ、
謡
(
うた
)
いながら消えた。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
霞
漢検準1級
部首:⾬
17画
“夜”で始まる語句
夜
夜半
夜更
夜中
夜叉
夜具
夜鷹
夜寒
夜明
夜業