四肢てあし)” の例文
あの、四肢てあしが半分ほどの所からなく、岩片で腹を裂かれて、腸が露出している無残な死体のほうが、真実の貴方だったのではなかったか。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それとも、からだの節々ふしぶしがいたみ、だんだん四肢てあしのうごきに不自由を感ずるところを見ると、今でいうリウマチとでもいうのかもしれない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
美しくも何んともありませんが、白粉氣のない顏は健康さうでよくびた四肢てあし、につこりすると邪念のない笑顏が、それは/\可愛らしい娘でした。
さうしてその四肢てあしが常に鋭角に動く、まさしく竹の感覚である。而も突如として電流体の感情が頭から足の爪先まで震はす時、君はぴよんぴよん跳ねる。
さうしてその四肢てあしが常に鋭角に動く、まさしく竹の感覚である。而も突如として電流体の感情が頭から足の爪先まで震はす時、君はぴよんぴよん跳ねる。
月に吠える:01 序 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
入浴の時はいつでもイスカーキを入り口に立てておいて入るのだが、今日も湯の中で凝乎じっ四肢てあしを伸ばしていた時に、裏手の土を踏んだ跫音あしおとを聞きつける。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そこには紺サージの服を着た男が、仰向に椅子にもたれたまま、ダラリと四肢てあし踏延ふみのばしている。私は少時、棒立になって立竦んでいたが、怖々ながら側へ寄って顔を覗込んだ。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
それにしても私の四肢てあしは、我が浮浪の幾歳月としつきに衰へてゐたので
色褪せた造りものの おまへの四肢てあしの花々で
無題 京都:富倉次郎に (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
私の心臟は寒さと四肢てあしの烈しい動きと
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
首のない屍骸は、切り口のまっ赤な肉がちぢれ、白い脂肪を見せて、ドクドク血を吹いている。二、三度、四肢てあし痙攣けいれんした。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、いじらしくも指までしゃげてしまった、あの四肢てあしの姿が、私の心にこうも正確な、まるで焼印のようなものを刻みつけてしまったのです
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
美しくも何んともありませんが、白粉気のない顔は健康そうでよく伸びた四肢てあし、にっこりすると邪念のない笑顔が、それはそれは可愛らしい娘でした。
朝枝は水っぽい花模様の単衣ひとえを着、薄赤とき色の兵児へこ帯を垂らしているが、細面の頸の長い十六の娘で、その四肢てあしは、佝僂せむしのそれのように萎え細っていた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
若い雌鹿めじかのやうに均勢の取れた四肢てあし、骨細のくせによく、あぶらの乘つた皮膚の光澤つやなどは、桃色眞珠しんじゆを見るやうで、側へ寄つただけで、一種異樣な香氣を發散して
上背はたっぷりあり、四肢てあしはすんなりと、おまけに、顔はそのとおりきれいだし、第一、そのおめえの身から、ほんのりにおってくる色気が大したものだよ。千両ものだよ
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それが私の場合では、あの時の鵜飼邦太郎うがいくにたろう四肢てあしにあったのですわ。当時私は、妊娠四ヶ月でございました。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
若い雌鹿めじかのように均勢のとれた四肢てあし、骨細のくせに、よくあぶらの乗った皮膚の光沢つやなどは、桃色真珠を見るようで、側へ寄っただけで、一種異様な香気を発散して
実に嘲弄ちょうろうし切ったもので、しかも、右近の足は、さっきったのか、真赤まっかに染まって四肢てあしや顔が青絵具あおえのぐのような青い屍骸をひとつ、踏まえているのだ。見ると、日向一学である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ほのかに白い物を塗つて、よく整つた眼鼻立、健康さうな皮膚の色、あぶらの乘つた四肢てあしなどを見ると、この更年期の女は、充分色つぽくもあり、そして肉感的でもあります。
はだけた襟もとや四肢てあしには、春とはいえ、深夜の空気はあまりにも寒々しい。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
八歳の小児の体躯からだに分別くさい大きな頭がのって、それが、より驚いたことには、重箱を背負ったような見事な亀背であるうえに、頭から胴、四肢てあしまで全身漆黒しっこくの長い毛で覆われているのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かぐはしい唇の曲線と、矢絣やがすりのお仕着せに包んだしなやかな四肢てあしの線を見ただけで、平次は何やら秘密の一つの鍵がこの娘のすぐれた肉體の美しさに潜んでゐるやうな氣がしてならなかつたのです。
顔から着物から四肢てあしから、うっすらと蒼い光りがさしていた。