むか)” の例文
金魚がマホメット本寺カセドラル円頂塔ドームに立籠って風速にむかっている、それをコルクの砂漠に並んでアネモネの花が礼拝している。これは活花台だ。
バットクラス (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
唯だ至粋をむかへて之を或境地にむるは人間の業にして、時代なる者は常に其の択取たくしゆしたる至粋を歴史の明鏡に写し出すなり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
公使がまた一々取次いで外相井侯に苦情を持込むので、テオドラ嬢の父は事毎に外相からの内諭で娘の意をむかえるに汲々として弱り抜いていたが
やしろもりそとしろ月夜つきよである。勘次かんじ村落外むらはづれのいへかへつたとき踊子をどりこみな自分じぶんむかところおもむいて三にんのみがしづかにはにぽつさりとつたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その立つやこれにり、その動くやこれに基づき、その進むやこれにむかう。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
熱慕ねつぼなさけにただむか
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
こういう弛緩しかんの状態に在っては、慧鶴青年自身、積極的に情慾の満足にむかわないまでも、他からの異性の誘惑には脆い筈なのだ。慧鶴にその事はなかったのか。是非、調べてみたい。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その熱情は今迄善良と思う純真な心によって導かれて居る。だが今度は悪の力でそれが後押しされるのだ。およそ人間が悪の力で後押しされる恋の情熱のむかう途は大概極まって居る。
ある日の蓮月尼 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかし、ただの童心というものは、文字どおり童心一枚だけのものであって、狡智にむかい、悪辣に懸かったときには、ひと堪まりもなくくずれてしまいます。欺され陥れられるばかりであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)