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唱名
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しやうみやう
然るに傳吉は昨夜より
牢内に
切繩を入れて彌々明日
死罪と申事故一
念唱名して
豫て
覺悟致しける所ろ
折節牢役人來り傳吉に向ひ
偖々其方は仕合者なり
既に死罪に
決し明日
首を
唯見れば
池のふちなる
濡れ
土を、五六
寸離れて
立つ
霧の
中に、
唱名の
聲、
鈴の
音、
深川木場のお
柳が
※の
門に
紛れはない。
然も
面を
打つ
一脈の
線香の
香に、
學士はハツと
我に
返つた。