和泉式部いずみしきぶ)” の例文
道命は無戒の比丘びくじゃが、既に三観三諦即一心さんかんさんたいそくいつしん醍醐味だいごみ味得みとくした。よって、和泉式部いずみしきぶも、道命がまなこには麻耶夫人まやふじんじゃ。男女なんにょの交会も万善ばんぜん功徳くどくじゃ。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
貫之つらゆき和泉式部いずみしきぶ・西行・式子内親王を同数としたことは、定家の評価の良さを今からでも見ることが出来て、歌人としての力量の鋭さはおおうべくもない。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
……梨壺の五歌仙といって、赤染衛門あかぞめえもん和泉式部いずみしきぶ紫式部むらさきしきぶ伊勢大輔いせのおおすけなんかと五人のうちに数えられる馬内侍という女の読んだ歌だが、すこしばかり文句がちがう。
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
和泉式部いずみしきぶがどうの、小野小町がどうのと云っても、もう間接な機智の歌になってしまって居る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
以前『御伽草子おとぎぞうし』の「和泉式部いずみしきぶ」を読んで、「昔和泉式部といふ名高き遊女ありけり」とあるのに、私などは喫驚びっくりしたものであったが、この書のできた時分の我邦わがくにの遊女も
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
知らしめんがためか聖徳太子の吟作なりとて「照る月のなかなる物の大弓おおゆみはあぞちにたちてまとにあたらず」また和泉式部いずみしきぶが「南無仏の御舎利みしゃりいだなながねむかしもさぞな今も双調そうちょう
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小野小町おののこまち清少納言せいしょうなごん和泉式部いずみしきぶなどの歌った物を見ますと、女が主観の激しい細かな詠歎を残しておりますが、この方には割合に矯飾が行われずに真率に女性の感情が出ております。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
切り燈台の火は、花のような丁字ちょうじをむすびながら、あかる螺鈿らでんの経机を照らしている。耳にはいるのは几帳きちょうの向うに横になっている和泉式部いずみしきぶの寝息であろう。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
才分の豊かな男女の文人はいずれも少しずつこれにたずさわっていた。例えば和泉式部いずみしきぶのごときは伝説かも知れないが、いつでも人の意表に出るような応酬をしていたように言われている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)