呼笛よびこ)” の例文
ぴいとひとつ呼笛よびこを吹きあよ、へっ、命知らずの野郎どもがだんびら物をひからしてとびこんで来るんだ、じたばたすると命あねえぞ
泥棒と若殿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
だが、追駈おっかけながら刑事の吹き鳴らした呼笛よびこ利目ききめがあった。それを聞きつけた一人の警官が、丁度その時、賊の前面に現われたのだ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは確かに夜勤の警官たちが同僚の密行警官や刑事たちを呼びあつめるための呼笛よびこだった。——それはますますこっちへ近づいてくる。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
蜘蛛くもの巣に封印された唇を開いてポケットから取り出した呼笛よびこを鳴らすと、レントゲン室はもちろん、その付近の部屋のおのおのから一人ずつ
烈しい呼笛よびこの音がこの温泉宿ゆやどの表と裏とから聞こえ、遙かに離れている主屋の方から、大勢の者の詈しり声や悲鳴や、雨戸や障子の仆れる音が聞こえて来た。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
‥‥けれど、丁度その時、小鳥の顫へ聲のやうな節をして、ピユツ、ピユツいふ呼笛よびこの音が、不意に彼を小艇へ呼び返した。小艇はもう出發するばかりになつてゐた。
そのうちに通行人が集まってくるので、私は呼笛よびこを鳴らしながら群集をさえぎるのに一生懸命でした。まさかその時に中のお客様が死んでおられるとは思いませんでした
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
床下にひそんで、頃合ころあいを計っていた九鬼弥助は、ふところから用意の呼笛よびこを出して口にくわえた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしたら、呼笛よびこが鳴って、写真が消えてしまったんだ。あとは白い幕ばかりさ。
片恋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おまはりや呼笛よびこ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
走りながら、警部は用意の呼笛よびこを取出し、部下の刑事達への合図に、ピリピリと吹き鳴らす。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さっき、鋭い呼笛よびこがし、つづいて主屋の方から、悲鳴や、襖、障子を蹴ひらく音や、走り廻る音が聞こえて来、しもべの三平じいやが、あわただしく様子を見に行ったがまだ帰って来ない。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
船員は呼笛よびこにつれて、傾いた甲板かんぱんの上をましらのように伝わって走ってゆく。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから彼はあわてて呼笛よびこをとりだして力いっぱいふき鳴らした。
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
呼笛よびこが鳴った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時、さい前の呼笛よびこを聞きつけた刑事の一群が、ドヤドヤと黒い部屋へ詰めかけて来た。その中には総監の顔も見える。人々は意外の犯人に、少なからず面喰っている様子だ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
季節しゅん違いだから鹿笛じゃアなし。……呼笛よびこかな」
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
このタンクにつけると、間もなくこの部屋を出て行った。工場の外で、異様な呼笛よびこの音が聞えたからだ。君は若しやと思って、塀の外をのぞきに行ったのだ。あの時のことを覚えているかね
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)