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味線
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みせん
いたずらに、もてあそんでいた三
味線の、いとがぽつんと
切れたように、おせんは
身内に
積る
寂しさを
覚えて、
思わず
瞼が
熱くなった。
遂翌朝泉岳寺へ引取けるに大勢の見物は
雲霞の如く忽ち四方に評判聞えけり
爰に庄左衞門が
妹は
美麗にして三
味線などよく
彈故品川の駿河屋何某の
許へ縁付けるに庄左衞門が父十兵衞は
古稀に近く
腰は二重に
曲居るを
一
層身に入れて教へけるに
勿々一通り成らぬ
上手と成しかば
稽古は
僅か四年の中成れども生質たる藝なりと友次郎も大いに
感じけるとなん斯て城富は
當年十七歳と成り所々の出入は
養父城重の時より
殖其上に三
味線淨瑠璃にて所々方々へ
招かれ今は家内も
安樂に暮し
養母も實子の如く不便を