名香めいこう)” の例文
やはり灰色の丸い顔をしていて、髪を背中へ長く垂らし、なかなか耳目じもくもととのっていた。そして私に御馳走をするのだといって、名香めいこうのようなものをいてくれた。
また、内奏ないそうをとげて、南都の東大寺に秘蔵伝来されている蘭奢待らんじゃたい名香めいこうるおゆるしをうけた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
名香めいこうこく、宝剣一そう、婦女三十人、その婦女はみな絶世の美女で、久しいものは十年もとどまっている。容色おとろえた者はどこへか連れて行かれて、どうなってしまうか判らない。
んだって。このにおいがかげねえッて。ふふふ。なかにこれほどのいいにおいは、またとあるもんじゃねえや、伽羅沈香きゃらちんこうだろうが、蘭麝らんじゃだろうがおよびもつかねえ、勿体もったいねえくれえの名香めいこうだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
すすも香を吐く花かと映り、蜘蛛の巣は名香めいこうかおりなびく、と心時めき、この世の一切すべて一室ひとまに縮めて、そして、海よりもなお広い、金銀珠玉の御殿とも、宮とも見えて、令室おくがたを一目見ると
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかるに重体の死にひんした一日、橘之助が一輪ざしに菊の花をけたのを枕頭まくらもとに引寄せて、かつてやんごとなきなにがし侯爵夫人から領したという、浅緑あさみどりと名のある名香めいこうを、お縫の手でいてもらい
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)