名利めいり)” の例文
ということになりおわる。僕は決して名利めいりが悪いとは言わない。名も利も求めずして来たるものならば、こばむべきものとは思わない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかし、これからが大事である。形式が精神を超えると名利めいりの家となる。「素峰そほう、これからやかましくいうぞ」と私は笑った。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
僕はその時ほど心の平穏を感ずることはない、その時ほど自由を感ずることはない、その時ほど名利めいり競争の俗念消えてすべての物に対する同情の念の深い時はない。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
何故私は此人を軽蔑したのか? 襟垢えりあかの附いた着物を着ていたとて、庭に襁褓むつきしてあったとて、平生へいぜい名利めいりほかに超然たるを高しとする私の眼中に、貧富の差は無い筈である。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
道衍どうえんの一生を考うるに、えんたすけてさんを成さしめし所以ゆえんのもの、栄名厚利のためにあらざるがごとし。しか名利めいりの為にせずんば、何をくるしんでか、紅血を民人に流さしめて、白帽を藩王にいただかしめしぞ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし誰人たれびとが不正の名利めいりかかえて、心のうちに満足を覚ゆるか。世人せじんに向かっては大きな顔もしようなれ、自己にかえりみてはなはだ不安の念を抱くや疑いない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかしてその成功とは何ぞやと聞くと、多くは名利めいりである。この成功あるいは具体的に言えば名利をとうとぶの結果として、人格をはかるにさえ名利を標準とする者が多い。たとえて言うと
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)