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吉三
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きちざう
世の
中つて
厭なものだねと
歎息するに、それはお
前の
心がらだとて
不滿らしう
吉三の
言ひぬ。
氣になんぞ
懸けなくてもいゝよ、
己れも
傘屋の
吉三だ
女のお
世話には
成らないと
言つて、
凭かかりし
柱に
脊を
擦りながら、あゝ
詰らない
面白くない、
己れは
本當に
何と
言ふのだらう
お
京はお
高祖頭巾眉深に
風通の
羽織着て
例に
似合ぬ
美き
粧なるを、
吉三は
見あげ
見おろして、お
前何處へ
行きなすつたの、
今日明日は
忙がしくてお
飯を
喰べる
間もあるまいと
言ふたではないか