又候またぞろ)” の例文
だが普通の人間とちがい、勝れた智能をもった蠅男のことだから、いついかなる手をもちいて又候またぞろ暴逆の挙に出てくるか分らない。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いや、世間でも、よく申しおりますぞ。——柴田どののお癖が出たといえば、又候またぞろ、底に底があることのようにみな用心して」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大殿の今度の御処置だけで、天下に、恥をさらしたに、又候またぞろ騒動を持上げて、斉彬公のお心にもとるなど、思慮があると思うか、無いと思うか。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
かれこのさまを見て居て又候またぞろ不安を感じ出して来た。屹度俺の来るまでは二人で何か——俺の事を話して居たに違ひない。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
初は「麹町二本ふたもと傳次方江かたへ同居」と云ふことになり、後「傳次不勝手に付金澤丹後方江又候またぞろ同居」と云ふことになつた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
文「弱い奴だなア、改心するなどと申して此の場を逃延にげのびて、又候またぞろ性懲しょうこりもなく悪事をした事が文治郎の耳に入れば助ける奴でない、天命と思って死ね」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、前とほゞ同じような叱言を、日曜だと親父だが、不断は母親が云う。折角顔を洗おうとした所へ、これで又候またぞろ意地が突っ張って、更に二三分は新聞を読む。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
朝は早く、夕方は手元の見えなくなるまで仕事をして、それからてくてく家に帰り、夜食を済まし、一服する間もなく又候またぞろ夜なべに取り掛かるという始末であった。
あなたをこんなにおそくまでお引きとめしておいて、又候またぞろめんどうなお願いをしようとするなんてわたしもどうかしていましたわ。……さあちゃんなんでもないのよ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それで今度の九州旅行にはお供の出来た義理ではないのだが、病源の扁桃腺肥大へんとうせんひだいを取除いて最早もう大丈夫と保証がついたので、又候またぞろ田鶴子さんの相役を承って罷り出た。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昨夜又候またぞろたった一人で、田舎から帰れるかどうか分らないから三四日は一人とあきらめていたら、けさ其でも細君帰れました。これでよかったわ。女だって二人ならば、ね。
果ては犬の影され見れば、われところんで、最初から負けてかゝる。それでも強者の歯をのがれぬ場合がある。最早もうりたろうと思うて居ると、今度出る時は、又候またぞろ跟いて来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
注射をすると折角出てゐる菌を又候またぞろ骨の中へ追ひ込んでしまふに過ぎんといふことを誰も気づかないんだ、結節を除くには注射などぜろだ、たはしでこするのが一番良い、こすり取つてしまふのだ
間木老人 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
彼は船長室へ又候またぞろはいって行った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「そこへ、拙者までが、又候またぞろ同様なことをいって来たので、それでお断りなされたのか」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すっかり濡れた足袋をはいてかえって、ゆたんぷ入れていくらか暖めて眠りかけながら又候またぞろあれこれ御思案中をやっていたらばね、私ったら狡いわねえ、ふっとこういうことを思いついたの。
ボーツと顔を打つ暖気あたたかさ又候またぞろ思出した様に空腹を感じた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
向座敷で手をぽん/\と打つと、又候またぞろ下女がまいって
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それさえあるに、又候またぞろ、のめのめとこれへ来たのは、近頃、魏を脱陣して、この周瑜の麾下きかへ投降してきておる蔡和、蔡仲に対して、何か策を打とうという肚ぐみであろう。その手は喰わん
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又候またぞろフフンと云つた気になる。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)