十足とあし)” の例文
怪物ばけもの!)と云うかと思うと、ひょいと立って、またばたばたと十足とあしばかり、駆戻って、うつむけに突んのめったげにござりまして、のう。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小風呂敷一つの空身からみわしですら、十足とあしあるいては腰をのし、一町あるいては息を休めなければならない熱さでありました。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
すゞちやんは、歩いてはたふれ、歩いてはたふれして、よち/\ともう十足とあしばかりあるけるやうになつてゐました。
ぽつぽのお手帳 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
何事か面白相に語らい行くに我もお辰と会話はなし仕度したくなって心なく一間いっけんばかもどりしを、おろかなりと悟って半町歩めば我しらずまよいに三間もどり、十足とあしあるけば四足よあし戻りて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そして、十足とあしばかり歩いて後ろを振り返った。庁館がまえの家はなくなって、荊棘いばらの伸びはびこった古塚があった。道度は驚いてあたふたと駈けだした。暫く走って気がいて懐中ふところに手をやった。
黄金の枕 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二足ふたあし三足みあし五足いつあし十足とあしになって段々深く入るほど——此処ここまで来たのに見ないで帰るも残惜のこりおしい気もする上に、何んだか、もとへ帰るより、前へ出る方がみちあかるいかと思われて、急足いそぎあしになると
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)