前駆ぜんく)” の例文
信長公の図南西覇となんせいはの基点として、秀吉がその前駆ぜんくをうけたまわるところのもの。もそっと、雄大たらねばならん、重鎮じゅうちんの風を示さねばならん
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其処そこみかどが白い高張たかはり提灯を二つけた衛士ゑいじ前駆ぜんくにして行幸になり、四十七士の国法を犯した罪をゆるおの/\の忠義を御褒おほめに成ると云ふ筋である。(四月十五日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その裾の辺を前駆ぜんくとして二本、後駆こうくとして二本都合四本の、松明たいまつの火に照らされながら、そうして遅く出た半かけの月に、頭上を蒼白くぼかされながら、妖怪の行列が通っていた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
屋の上で鴟の鳴くのは飯綱の法成就の人に天狗が随身伺候しこうするのである意味だ。旋風の起るのも、目に見えぬ眷属けんぞくが擁護して前駆ぜんくするからの意味である。飯綱の神は飛狐ひこっている天狗である。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ト僕ガ言つてはヤツパリ広目屋臭ひろめやくさい、おい悪言あくげんていするこれは前駆ぜんくさ、齷齪あくせくするばかりが平民へいみんの能でもないから、今一段の風流ふうりう加味かみしたまへたゞ風流ふうりうとは墨斗やたて短冊たんざく瓢箪へうたんいひにあらず(十五日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
前駆ぜんくの人々とみえる七、八名の影が、大股にまず門を出て行った。つづいて、夜目にもしるき白と黒のまだら牛が、車おもげに曳いて通る——。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二騎、町木戸から、ほこりを立てて、城門の方へ駈け去った馬蹄ひづめの音にも、さして事々しく、天下の急変の前駆ぜんくとは、耳そばだてる者もなかった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五湖、裾野すその人穴ひとあな、いたる所ではげしい斬り合があったり、流れ矢が飛んできたりしたため、善良な村の人たちは、すわ、また大戦の前駆ぜんくかと、例によって、甲州の奥ふかく逃げこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前駆ぜんくの家臣をよびとめて、家康は駒を止めた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)