円形まるがた)” の例文
旧字:圓形
それッていうのが、近常さんの一代の仕事として、博覧会へ出品しようとおもくろみなすったのが、尺まわりの円形まるがた釣香炉つりこうろでしたとさ。
顔の下部は円形まるがたで、フィリッポ・リッピの描いた処女のような、仇気あどけない真面目まじめさをそなえていた。顔色は少し曇っていた。
塚のやや円形まるがた空虚うつろにして畳二ひら三ひらを敷くべく、すべて平めなる石をつみかさねたるさま、たとえば今の人の煉瓦れんがを用いてなせるが如し。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もう一つの送風機の穴は、蓋があって、これがはずせないことはないが、なにしろ二十センチそこそこの円形まるがたで、外は同じ位の大きさの鉄管で続いている。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
庄助が店座敷の方へ行って見ると、ちょうど半蔵はひとりいる時で、円形まるがたの鏡なぞを取り出し、それに息を吹きかけ、しきりに鏡の面をふいているところであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その壁には鉛筆画、チョオク画、油絵とうのスケッチを多く掛けあり。枠に入れたると入れざるとまじれり。前手まえてに小さき円形まるがたの鉄の煖炉だんろあり。その上になべ類を二つ三つ載せあり。
二羽の丹頂たんちょうの棲んでいる鉄柵でこしらえた、円形まるがたの檻があり、檻の周囲は、ローマの円形劇場か、両国の国技館の観覧席のように爪先上りになって、その場所全体が擂鉢形すりばちがたをしている。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
高麗青皮の胴乱どうらん、金具は趙雲の円形まるがた、後藤宗乘の作、確かにも/\ほかに二つとない品でござります、口惜くやしい事をしましたな、それと知ったら早くおかみへ訴えて、かたきを取ってやるのに
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
マロニエ円形まるがた木立こだちと一緒に次第にひくく地平の彼方あなたへ沈んでく。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
名は知らず、西洋種の見事な草花を真白まっしろな大鉢に植えて飾った蔭から遠くその半ばが見える、円形まるがた卓子テエブルを囲んで、同一おなじ黒扮装くろいでたち洋刀サアベルの輝く年少としわかな士官の一群ひとむれが飲んでいた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)