ソノ)” の例文
南家ナンケ郎女イラツメ神隠カミカクしにつたのは、ソノ夜であつた。家人は、翌朝空がれ、山々がなごりなく見えわたる時まで、気がつかずに居た。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
長星チョウセイアリ、赤クシテボウ。東西ヨリ飛ンデ、孔明ノ軍営ニ投ジ、三タビ投ジテフタタビカエル。ソノ流レ来ルトキハ光芒コウボウ大ニシテ、還ルトキハ小サク、ソノウチ一星ハツイチテ還ラズ。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京都キョウト上京カミギョウ浄福寺通ジョウフクジドオリ金箔キンパク斎藤サイトウ方ヨリ同人方雇人小林茂三コバヤシシゲゾウ(二三)ノ家出保護願ノ郵書ヲ受理シタル大津警察署ニオイテハ、偶々タマタマソノ人相着衣ト本件被害者ノソレト符合スル点アルヲ以テ
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だから言ひ方も、感じ方も、ソノうえ、コトバ其ものさへ、郎女の語が、そつくり寺の所化輩シヨケハイには、通じよう筈がなかつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
尤、「其」と言ふ語は、便宜上挿入したゞけで、決して、「し」などに「ソノ」の義があるとは考へてはゐないのだ。
ソノ、粘り気の少いさくいものを、まるで絹糸を縒り合せるやうに、手際よく糸にする間も、ちつとでも口やめる事なく、うき世語りなどをして居た。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)