六ヶむずか)” の例文
わたくしべつ婦道ふどううの、義理ぎりうのとって、六ヶむずかしい理窟りくつからして、三浦みうらみとどまったわけでもなんでもございませぬ。
けれどもどんな事があつても人間が餓死すると云ふことは生きやう食べやうと云ふこと以上に苦しい六ヶむずかしい忍耐の必要なことだと私は思ふ。
貞操に就いての雑感 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
そんな処を見付けると彼は大喜びで、その空地の中央の枯草に寝ころんで、大好きな数学の本を拡げて、六ヶむずかしい問題の解き方を考えるのであった。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
新「だがお園どん、本当にお前さんは大病で、随分私は大変案じて一時ひとっきり六ヶむずかしかったから、私は夜も寝なかったよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれども此の習慣は間ちがつてゐます。非常にこみ入つた六ヶむずかしい研究は別として、誰れでも一と通りの学問は知つてゐなければなりません、子供でも大人でも。
神社じんじゃまつられたからともうして、矢鱈やたら六ヶむずかしい問題もんだいなどをわたくしのところにお持込もちこみになられることはかた御辞退ごじたいいたします。
然し、要するに、出来る丈け楽な気持ちに、いやなおもひをせずに、日が暮れさへすれば、さう云ふ六ヶむずかしい事も強ひて考へ通す必要はなかつた。
惑ひ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
これは普通の世渡りにも必要なものであるが、不良の方の術と呼吸は世間並の裏を行くのだから六ヶむずかしい。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
けれど氏と云ふ人を他人に感じさす事は六ヶむずかしい。しかし乍らそれは氏にとりては何の苦痛にも価しはしないであらう。氏はよく自身を見るのめいがある。
平塚明子論 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
さあそれははなは六ヶむずかしい……。くちってしまへば念力ねんりきじゃが、むろんただそうったのみではらぬ。
お前達の云うものはみんな六ヶむずかしくてダメだ。それにアアのもサアのも、鉄砲だの刀だの、あぶないものばかりだ。そんなものを欲しがるものじゃない。リイを見ろ。
奇妙な遠眼鏡 (新字新仮名) / 夢野久作香倶土三鳥(著)
こんなに大任であり六ヶむずかしい事であるかと云ふ事などは一ぺんも考へて見た事のないやうな、寧ろさう云ふ地位を天賦のものか何かのやうに考へてたゞ無自覚に
ある女の裁判 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
不良学の中で最も六ヶむずかしく、面白いのは、他人の心理を見抜く術と、そのすきに乗ずる呼吸である。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
こう云って来ると馬鹿に六ヶむずかしいが、とにかくどんな姿をしていても、アクドイ嫌味なところがなく、女の髪の結い振り、化粧ぶり、襟や着物の取り合わせ、男なら帽子とオーバー
とても自分の貧弱な頭ではそれ/″\に立派な解釈をつけて批評して行くことは六ヶむずかしい、と云つてやらないわけにも行かないし困つた/\と云ひ暮しても其日数もなくなつてしまつた。
ウォーレン夫人とその娘 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
この時が成功不成功の分れ目だそうで、又一番六ヶむずかしい技巧を要するのだそうな。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
漸く私は人達の所謂社会問題を自分の問題として考へることが出来るやうになつた。小さな私の問題が拡がつた。そして深い根ざしを持つた。そして私の問題の解決は六ヶむずかしくなつてしまつた。
人間と云ふ意識 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
そうして眼を閉じて見ますと、探偵小説の本来はかくあるべきもの——そうしてかく六ヶむずかしいものであるということをまざまざと印象づけられまして、いよいよかぶといでしまいました。
所感 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ウッカリすると学校のどの科目よりも六ヶむずかしいかも知れぬ。