傀儡くぐつ)” の例文
卑しい傀儡くぐつの顏を寫しましたり、不動明王を描く時は、無頼の放免はうめんの姿を像りましたり、いろ/\の勿體ない眞似を致しましたが
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
尼、傀儡くぐつ師、旅商人、工匠たくみ、山伏など——雑多だった。——その中で、何かに腰かけ、独り静かに、読書していた狩猟装束かりいでたちの若公卿がある。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ロア・デ・リボー(淫猥いんわい王)わが邦中古傀儡くぐつの長吏様の親方が所々にあって本夫ほんぷ外の男と親しむ女人より金五片ずつの税を
したがって右の連歌の詞書は、「傀儡師くぐつしなるサムカ」ではなくて、「傀儡くぐつなるシサムが」と見るべきものであろう。
巻軸取りの連中は、天草以外にも沢山あるが、傀儡くぐつ仕込みの火術をもって、天草一味を混乱させ、ドサクサまぎれに奪い取ったことを、知っているものはない筈だ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴方は南国の傀儡くぐつを御存じですか? (と物識りの旅行家が私に話してきかせました)
われらなどただ藤十郎様を頼りにして、傀儡くぐつのように動いていけばよいのじゃ。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いつの時代のことであったか、都を落ちて来てこの村に居を構えた公卿くげが、有りのすさびに傀儡くぐつを作りそれを動かしたのが始めで、有名な淡路源之丞あわじげんのじょうと云うのはその公卿の子孫であるそうな。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
卑しい傀儡くぐつの顔を写しましたり、不動明王を描く時は、無頼ぶらい放免はうめんの姿をかたどりましたり、いろ/\の勿体もつたいない真似を致しましたが
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
傀儡くぐつ遊女うかれめとの間にはその別があって、両者間の歌の歌い方にも相違があり、遊女は今様を律の音に歌うが、傀儡は呂の音に歌うという様な事であったと見える。
めずらしい幻術師が来ても、傀儡くぐつ師が来ても、賭弓かけゆみや賭剣術が催されても、野天のでんであった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、にわかに足を止めた。「わかった!」と呻くように云ったものである。「『くぐつ』とは人形の別名だ。傀儡くぐつだ傀儡だ! 人形のことだ! 『てんせい』というのは眼のことだろう。 ...
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ホンに若太夫殿の云う通じゃ。藤十郎様には、その辺の御思案が、もうちゃんと付いているはずじゃ。われなどは、ただ藤十郎様にあやつられて傀儡くぐつのように動けばよいのじゃ」と、合槌あいづちを打った。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「そう思うのはその方の心が狭いからの事じゃ。弥陀みだ女人にょにんも、予の前には、皆われらの悲しさを忘れさせる傀儡くぐつの類いにほかならぬ。——」
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
傀儡くぐつ舞わしましょう、傀儡舞わしましょう」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仮名もろくに書けないものには、道風の書もつまらないぢやないか? 信心気しんじんきのちつともないものには、空海上人の誦経ずきやうよりも、傀儡くぐつの歌の方が面白いかも知れない。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
南蛮渡来の傀儡くぐつ、魂あって踊ります。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
恐らくは傀儡くぐつの女を買う男でも、あの時の己ほどは卑しくなかった事であろう。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今では二十何人かの盗人のかしらになって、時々洛中らくちゅうをさわがせている事、そうしてまた、日ごろは容色を売って、傀儡くぐつ同様な暮らしをしている事——そういう事が、だんだんわかって来た。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もしひょっとして来なかったら——ああ、私はまるで傀儡くぐつの女のようにこの恥しい顔をあげて、また日の目を見なければならない。そんなあつかましい、よこしまな事がどうして私に出来るだろう。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
傀儡くぐつで悪くば、仏菩薩ぶつぼさつとも申そうか。」
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)