傀儡師くぐつし)” の例文
ドッと倒れた人間を踏まえ、突っ立ったのはほかでもない、傀儡師くぐつしの言葉に不安を覚え、一夜警護に当っていた、袴広太郎その人であった。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
柿色の投頭巾なげずきんに、横筋の袖無そでなし、丸ぐけの太いひもで、胸に人形箱をかけた、この頃町でよく見る飴売あめうりの傀儡師くぐつしという姿の者。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したがって右の連歌の詞書は、「傀儡師くぐつしなるサムカ」ではなくて、「傀儡くぐつなるシサムが」と見るべきものであろう。
これは当時真に戸籍なくして乞食のために天幕を張りつつ、漂泊に一生をすごした浮游の民の傀儡師くぐつしの類とは全く別のものである。いわば殿様的贅沢ぜいたくであった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
私娼、傀儡師くぐつし、金剛砂売り、ふたなり、侏儒こびと吐蕃人とばんじん、——そういう人々の群れであって、先頭に立って歩いているのは、鬼火の姥と範覚とであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「だって、おら、子持ちだから。他人ひとよりは、腹がすくのは、当りめえだに。……あれっ、だっていうに、傀儡師くぐつしさんよ、その、とりの骨、り返してくんな」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たえずかれの背後うしろをつけて、ひるむのをののしっていた三位卿は、ぶっ仆れている駕の一つの内から、傀儡師くぐつしのもち歩く一個の人形箱が蹴とばされているのを見た。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅黄あさぎのずきんにうこんの袖なし、伊賀袴をはき一本差し、人形箱を胸へ掛けた、古風の傀儡師くぐつしがうつ向き加減に、足のつま先を見詰めながら、すべるように右手を通って行く。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いっそ他の傀儡師くぐつしに就き、大道芸人の弟子童でしわっぱとなり、ざるを持ッて銭乞いでもするが、そのさがに、ふさわしいぞ。……くやしいか。くやしくば人なみに励んでみよと
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
振り返ってみると見覚えのある、例の不思議な傀儡師くぐつしであった。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
空地あきちにさえも、傀儡師くぐつしか、香具師やしか、人寄せの銅鑼どらを鳴らしている男が、何かわめいているし、被衣かずきをかぶって、濃い脂粉しふんをほどこした女が、あやしげなまなざしをくばって
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸国を巡る傀儡師くぐつしであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
児屋郷こやごう昆陽寺こやでらには、ここ数日前から約十名ばかりの僧形そうぎょうや、武士や町人や、また医者、傀儡師くぐつしなどの雑多な身なりをした人々がひそかに寄って、そのまま一房に合宿していた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やいっ、何だわりゃあ?」傀儡師くぐつしだの、菰僧こもそうだのが、って来そうにしたので
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
革足袋かわたびにわらじ穿きだし、どこといって抑えどころもないが、歴乎れっきとした藩臣でなく、牢人の境界きょうがいであることは、こういう船旅において、ほかの山伏だの傀儡師くぐつしだの、乞食のようなボロ侍だの
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飴売あめう傀儡師くぐつし
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)