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伊勢參宮
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いせまゐり
付て海へ
沈め其身は用意の
伊勢參宮の
姿に改め彼二
品を
莚包として
背負ひ
柄杓を持て其場を
寶澤は
盜賊に
殺害されし
體に
拵らへ事十分
調ひぬと身は
伊勢參宮の
姿に
窶一先九州へ下り
何所にても足を止め
幼顏を
失ひて後に
名乘出んものと心は早くも定めたり
先大坂へ
出夫より
便船を
汲て與へたり寶澤は
押戴き
懷中より何やらん取出して
飮眞似せり此時以前の
男寶澤に向ひ尋けるは其方は年も
行ぬに
伊勢參宮と見受たり
奇特の事なり
何の國の
生なるやと問ふ
思慮深き寶澤は紀州と名乘ば
後々の
障なるべしと早くも心付
態と
僞りて私しは信州の
生れにて候と云
亭主此を