人馴ひとな)” の例文
そうしてそのあとからあん人馴ひとなれない継子をあわれんだ。最後には何という気の毒な女だろうという軽侮けいぶの念がいつもの通り起った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
応対のしとやかにして人馴ひとなれたる、服装みなりなどの当世風に貴族的なる、あるひ欧羅巴ヨウロッパ的女子職業に自営せる人などならずや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ボンは人馴ひとなれたやさしいいぬで、主人しゅじん三郎さぶろうにはもとよりよくなつきましたが、まただれでもひとがあれば、そのひとになついたのです。だから、みんなにかわいがられていました。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
可懐なつかしい姿、ちっ立佇たちどまってという気もしたけれども、小児こどもでもいればだに、どのうちみんな野面のらへ出たか、人気ひとけはこのほかになかったから、人馴ひとなれぬ女だち物恥ものはじをしよう、いや、この男のおもかげでは、物怖ものおじ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そういう人馴ひとなれない
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それは一種の反感と、恐怖と、人馴ひとなれない野育ちの自尊心とが錯雑さくざつして起す神経的な光りに見えた。津田はますますいやな気持になった。小林は青年に向って云った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)