“亀裂(ひゞ)” の例文
旧字:龜裂
へえー芝居(しばゐ)にありさうですな、河竹(かはたけ)新(しん)七さんでも書きさうな狂言(きやうげん)だ、亀裂(ひゞ)皹(あかぎれ)を隠(かく)さう為(た)めに亭主(ていしゆ)は熊(くま)の膏薬売(かうやくう)り、イヤもう何処(どこ)で何(ど)う云(い)ふ方(かた)にお目にかゝるか知れません。
歯痒(はがゆ)うてしようがおまへなンだが、結局、名前も住んでる所も何も分らん男が一人、雪と雪との間の亀裂(ひゞ)に落ちて死んだちゅう事だけで、委しい事は一向分りまへなンだ。
其(そ)の店(みせ)で獣(けもの)の皮(かは)だの、獅子頭(しゝがしら)、狐(きつね)猿(さる)の面(めん)、般若(はんにや)の面(めん)、二升樽(にしやうだる)ぐらゐな座頭(ざとう)の首(くび)、——いや其(それ)が白(しろ)い目(め)をぐるりと剥(む)いて、亀裂(ひゞ)の入(はい)つた壁(かべ)に仰向(あふむ)いた形(かたち)なんぞ余(あんま)り気味(きみ)の可(い)いものではなかつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
晴代は所詮(しよせん)駄目だといふ気がしたが、それも二人の大きな亀裂(ひゞ)であつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
今考えて見てもゾッとするほどで、一ぺん渡ったらどこまで行くか分らず、所々に、クレバスちゅうて、積った雪と雪の間に、大きな亀裂(ひゞ)がおまして、そこへ落ちたら、お終いだす。