どうだの、これはべつに、おいらが堺屋さかいやからたのまれたわけではないが、んといっても中村松江なかむらしょうこうなら、当時とうじしもされもしない、立派りっぱ太夫たゆう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かがみのおもてにうつした眉間みけんに、ふかい八のせたまま、ただいらいらした気持きもち繰返くりかえしていた中村松江なかむらしょうこうは、ふと、格子戸こうしどそとひとおとずれた気配けはいかんじて、じッとみみすました。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ついに一たことのない、中村松江なかむらしょうこう女房にょうぼうが、たずねてたといただけでは、春信はるのぶは、ぐさまそのになれなかったのであろう。からはなすと、藤吉とうきちかおをあらためて見直みなおした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)