中仕切なかじきり)” の例文
そこへ、中仕切なかじきりの障子が、次のあかりにほのめいて、二枚見えた。真中まんなかへ、ぱっと映ったのが、大坊主の額の出た、唇のおおきい影法師。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一角がよろけながら、四畳半の床の上に横になった様子でございますから、そっと中仕切なかじきりふすまって、台所の杉戸を締め
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いいえ……」中仕切なかじきりの向うからお綱の声がした。お綱はすッかり朝化粧まですまして、なりもきちんとできていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしが店先の硝子ガラス戸をあける時には、いつでもきまって、中仕切なかじきりの障子ぎわにきちんと坐り、円い背を少し斜に外の方へ向け、鼻の先へ落ちかかる眼鏡をたよりに、何か読んでいる。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
誰だか分りませんが、風体ふうていが悪いから、お由が目くばせをして茂二作を奥の方へ逐遣おいやり、中仕切なかじきりの障子を建切りまして
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
置敷居おきしきいで、しきって、道具立ての襖がまれば、十七一時いっときに出来ると云いますが、新館、新築で、ここを棄ててくから、中仕切なかじきりなんど、いつも取払って
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
店と奥との、中仕切なかじきり内緒暖簾ないしょのれんが、彼の眼が走ると共にうごいていた。そして、その暖簾の下に細かい茶縞の着物の裾と、塗鞘ぬりざやの大小のこじりが、ちらと見えて、すぐ消えた。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中仕切なかじきりのさん格子ごうしに、ゆらゆらと黄色い明りがさしたので、娘の目も初めて影法師に知ったでしょう。四ツ目屋の奥には、最前から物音もさせずに、まだほかの男がいた気配であります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伴藏はつぶやきながら中仕切なかじきりの障子を明けると、真暗まっくら
と、店と奥の中仕切なかじきりで、御寮人は、老番頭の佐兵衛を顧みていった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)