両女ふたり)” の例文
旧字:兩女
夫は直々じき/\両女ふたりにお問成といなされば分ります、う云う事になって見ますと何気なく二人をまねいたのが天の助けでゞも有たのかと思います
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
両女ふたりは人目に触れないで二階へ上ることができました。お君は、先に立ってその一室の障子を細目にあけて中を見入り
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その両女ふたりを取巻いて、磯くさい人間ども、幾人ともわかりません——悪魚の群のようなのが、飢えた目をして、今にもいどみかかりそうなけしき。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歌舞伎座かいりょうざが大入ですとさ、姉さん御覧なすってと小歌が云う、そうだって見たいのねえと婢が云う、それから両女ふたりは話が栄え、蠣浜橋かきはまばしへ毎日お参りに行く事、髪結を取替た事
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
何故って、両女ふたりで育ててみますと、彼子あれが可愛くて可愛くて、お互いに手離せるものでもなし、片一方が独り占めにするということも出来ないようになってしまったのでございます
二人の母親 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
両女ふたり立つ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうしてこの両女ふたりが、こんな所を旅しているのだろうか。お蕗とお次とが、あたかも姉妹のように、連れ立っているさえ、不審でないことはない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お松はお君の部屋へ導かれて、そこで両女ふたりは水入らずに一別以来の物語をしました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やがてかこいの中へ入れると、きょろきょろわたし達両女ふたりの顔を見ているようでした。赤ん坊はそのときまだ判然はっきりと眼が利きはしませんが、わたし達の思いしでそんな風に見えたのです。
二人の母親 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
何と思ったか婢もまたたっいったので、この間にと皺のない紙へ皺をつけて、両女ふたりの坐って居た辺へ投出した、小歌は手水ちょうずに下りたので、帳場の前で箱丁はこやに何か云って居る処へ婢が来て
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
と、両女ふたりの行方をさがすことに町方の手先はもちろんのこと、あらゆる方法をもって、狂奔していたからである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうせ歌ちゃんも一緒でしょうお椀の滋味おいしいのか何かと、両女ふたりが笑う間に纒まって婢は立去った、椀来り、鳥来り、小歌と向い合いに膳をならべた貞之進は、それが今連立って歩いた時よりも
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
子供は両女ふたりに同じようになついていて、よくいうことをききます。わたし達も、今はそれを不自然と思わぬようになりました。子供は何も知らずに、一つのキスの代りに二つのキスをうけています。
二人の母親 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
神尾主膳の家と、駒井能登守の屋敷とは、その間がそんなに遠くはないのに、両女ふたりともに今までかおを会せる機会がありませんでした。甲府にいるということをすらおたがいに知ってはおりません。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
金吾にもつれて行った両女ふたりをやり過ごすと、また元の窓際まどぎわへ背をのばして、屋内の話に聞き耳をたてていました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お絹とお角と両女ふたり挨拶あいさつがあってから、お角が改めて
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
むりに追い求めれば、死なずともよい両女ふたりをかえって死なすかもしれん。その生命いのちを断って山中に捨て、身をもって国外に逃げるなどという窮策きゅうさくに出るおそれは多分にある。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
話のうちに、両女ふたりは当夜の波風を思いだして、思わず、襟元をぞっとさせています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両女ふたりは、息をつめて、もだしきった。眸と眸とは、曼珠沙華まんじゅしゃげのように、燃えあった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)