両個ふたり)” の例文
旧字:兩個
昼間の程はつとめてこもりゐしかの両個ふたりの、夜に入りて後打連うちつれて入浴せるを伺ひ知りし貫一は、例のますます人目をさくるならんよとおもへり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
褄前つまさきを揃えて裾を踏みくぐむようにして、円髷まげと島田の対丈ついたけに、面影白く、ふッと立った、両個ふたりの見も知らぬ婦人おんながある。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されば意地きたなき穴さがし、情人なききらわれ者らは、両個ふたりの密事を看出みいだして吹聴せんものと、夜々佐太郎が跡をつけ、夜遊びの壮年らも往きかえりにこの家の様子をうかがいぬ
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
兼吉君は無論無罪になるのであるから、少しも心配なく、其れに両個ふたりが相許るすならば、花ちやんと結婚したらばと思つて居るのです、元より強ふることは出来ないですが
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
私も出来る事なら、人間両個ふたりの命をすくふのですから、どうにでもお助け申して、一生の手柄に為て見たい。私はこれ程までに申すのです
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
夜叉羅刹やしゃらせつ猶予ためらわず、両個ふたり一斉に膝を立てて、深川夫人の真白き手首に、黒く鋭き爪を加えて左右より禁扼とりしばり三重みえかさねたる御襟おんえり二個ふたりして押開き、他目ひとめらば消えぬべき、雪なす胸のの下まで
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両個ふたり相見て言葉なし
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
爾思しかおもへる後の彼は、ひそかにかの両個ふたりの先に疑ひし如き可忌いまはしき罪人ならで、潔く愛の為に奔る者たらんを、いのるばかりにこひねがへり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
両個ふたりはただちに手を引きぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)