世帯せたい)” の例文
旧字:世帶
その子は今日家内かないの一人にして、これを手離すときはたちまち世帯せたいの差支となりて、親子もろとも飢寒きかん難渋なんじゅうまぬかれ難し。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さてはこの母親の言ふに言はれぬ、世帯せたい魂胆こんたんもと知らぬ人の一旦いつたんまどへど現在の内輪うちわは娘がかたよりも立優たちまさりて、くらをも建つべき銀行貯金の有るやにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
首尾が好いと女世帯せたい、お嬢さん、というのは留守なり、かみさんもひまそうだ。最中もなか一火ひとひで、醤油おしたじをつけて、とやっこ十七日だけれども、小遣こづかいがないのである。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな集合花を、植物学上で頭状花とうじょうかと称する。キク科の花はいずれもみな頭状花である。つまりり合い世帯せたい、すなわち一の社会を組み立ている花である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「わたくしは壻を取ってこの世帯せたいを譲ってもらいたくはありません。それよりか渋江さんの所へ往って、あのかたに日野屋の後見うしろみをしていただきたいと思います。」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
山「はい長い間旅をして、久しく播州の方へ参って、少しの間世帯せたいを持って居たり、種々いろ/\様々に流浪致し、眼病に成ってから故郷懐かしく、実は去年から此処へ来て世帯しょたいを持って居る」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さればここに小学の生徒ありて、入学の後一、二カ月をすぎ、当人の病気か、親の病気か、または家の世帯せたい差支さしつかえをもって、廃学することあらん。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この時に当って、まさにくつがえらんとする日野屋の世帯せたいを支持して行こうというものが、あらたに屋敷奉公をてて帰った五百の外になかったことは、想像するに難くはあるまい。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すなわち家婦かふにんにして、昼夜のべつなく糸をつむ木綿もめんを織り、およそ一婦人、世帯せたいかたわらに、十日のろうを以て百五十目の綿を一反の木綿に織上おりあぐれば、三百目の綿に交易こうえきすべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)