丈余じょうよ)” の例文
旧字:丈餘
丈余じょうよのさくらの枝から、黒装束くろしょうぞく曲者くせものがひとり、ヒラリととびおりると同時に、いきなり抜きうちに左近将監に切ってかかりました。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
我らは海岸に立ちて、脚下に襲い来る丈余じょうよの浪がたちまち力尽きたるが如くに引退ひきのくを見て、ヨブ記のこの語の妙味を悟り得るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
一同がなわをひくと! 見よ! たくたくたる丈余じょうよの灰色の巨鳥きょちょう! 足はかたくしばられ、恐怖きょうふ疲労ひろうのために気息きそくえんえんとしている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それはともかくあの奥深い青髪山まで、丈余じょうよの雪を踏んで三日ごとに兄のため食物をはこぶ友の身の上を考えると、気の毒でならなかった。
雪魔 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
半間はんげん程の、曲りくねった細い通路の両側には、陽をさえぎって、見上げるばかりの丈余じょうよ生垣いけがきだ。生垣と云っては当らぬ。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その負さりたもうた腹部の中窪なかくぼみな、御丈みたけ丈余じょうよの地蔵尊を、古邸ふるやしきの門内に安置して、花筒に花、手水鉢に柄杓ひしゃくを備えたのを、お町が手つぎに案内すると、外套氏が懐しそうに拝んだのを
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かつて、かれがまだ鞍馬くらま山奥やまおくにいたころは、朝ごとまきをとりに僧正谷そうじょうがたにをでて、森林のこずえをながめては、丈余じょうよの大木へとびかかって、れたる枝をはらい落とした——その練習れんしゅうによるのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丈余じょうよの雪に青春の足跡をしるしている夜這よば
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
両側とも丈余じょうよのコンクリート塀だ。突き当りは高い石垣になって、逃げ込む隙間すきまはない。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
オ、舞いめぐる空の怪物かいぶつ! それは丈余じょうよ大鷲おおわしだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)