一面識いちめんしき)” の例文
「つまらない。一面識いちめんしきのないものが寄って会食するよりなおつまらない。ひとの家庭もみんなこんな不愉快なものかしら」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すなわち紹介しょうかいを求めて軍艦奉行ぐんかんぶぎょうやしき伺候しこうし、従僕じゅうぼくとなりて随行ずいこうせんことを懇願こんがんせしに、奉行はただ一面識いちめんしきもと容易たやすくこれをゆるして航海こうかいれつに加わるを得たり。
まことは、兩側りやうがはにまだいへのありましたころは、——なか旅籠はたごまじつてます——一面識いちめんしきはなくつても、おな汽車きしやつたひとたちが、まばらにも、それ/″\の二階にかいこもつてるらしい
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女主人をんなあるじにてなか/\の曲者くせものなり、「小僧こぞうや、紅葉さんの御家へ參つて……」などと一面識いちめんしきもない大家たいかこえよがしにひやかしおどかすやつれないから不思議ふしぎなり。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)