一罎ひとびん)” の例文
それに値段ねだん不廉たかいものだからといふのであつた。勘次かんじはそれでもいくぐらゐするものかとおもつていたら一罎ひとびんが三ゑんだといつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
気が遠くなるようなことがないとも限らんというので一罎ひとびんのブランデー酒、それからヒョコリ死なないともかぎらないというので一名の坊さん。
のみならず彼に彼女の持つてゐた青酸加里を一罎ひとびん渡し、「これさへあればお互に力強いでせう」とも言つたりした。
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
また、ベン・ガンの塩漬の山羊の肉や、ヒスパニオーラ号から持って来た幾つかの珍味や一罎ひとびんの年た葡萄酒で、その食事の何とおいしかったことか。
「よいこらさあ、それからラムが一罎ひとびんと」で家が家鳴やなりするのを、私はたびたび聞いたことがある。
勘次かんじまたかはえてはしつた。藥舖くすりやではびんれたくすり二包ふたつゝみわたしてれた。一罎ひとびんが七十五せんづゝだといはれて、勘次かんじふところきふにげつそりとつた心持こゝろもちがした。かれ蜻蛉返とんぼがへりにかへつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
スペインの葡萄酒が一罎ひとびんと乾葡萄とが前に載せてあり、医師は仮髪を膝の上に置いて、絶えず煙草を吹かしていたが、それが先生の昂奮しているしるしだということは私は知っていた。