一尾いっぴき)” の例文
何か魚でも釣って来ておさいにしてあげましょうって今までかかって釣をしていましたよ、運が悪くって一尾いっぴきも釣れなかったけれども
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
旅籠屋はたごやだ。新築でがしてな、まんずこの辺では彼店あすこだね。まだ、旦那、昨日はその上に、はいこい一尾いっぴき買入れたでなあ。」
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「暫らくお待ち下さいまし」と奥へ相談に行き、「折角ですから一尾いっぴきでおよろしければ……」といった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
探してみたまえ。たなのものを全部ろしてみたまえ。燻製ものの一尾いっぴき半尾はんびきぐらいはありそうなものじゃ。とにかく金に糸目はつけん。君にもしっかりチップをはずむよ
第三に——最も意外だったのはこの事件である。第三に下宿は晩飯のぜんに塩焼のあゆ一尾いっぴきつけた!
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いよいよという時にゃあ、俺だって馴染み甲斐に魚っ子の一尾いっぴきも持ってお祝いに行こうと思っているんだ。惚気のろけがまじっても構わねえ、万事正直に云って貰おうじゃねえか。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「待てよ。おれはどうでもいいが、送別会のおつきあいにあゆ一尾いっぴきももらって置くか。」
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あれは、はあ、駅長様のとこくだかな。昨日きのう一尾いっぴきあがりました。その鱒は停車場ていしゃば前の小河屋おがわやで買ったでがすよ。」
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とうとう一尾いっぴきも釣れずに家へ帰ると、サアおこられた怒られた、こん畜生ちくしょうこん畜生と百ばかりも怒鳴どなられて、香魚あゆ山鯇やまめは釣れないにしても雑魚ざこ位釣れない奴があるものか
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
犠牲の否認というが如きは最卑最小最劣の精神である、犠牲の強要強求乃至ないし巧要巧求をするのは、豪傑乃至智者なのである。犠牲を甘受しなければ鮒一尾いっぴき、卵一箇もれぬのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)