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をりかへ
黒く
多き
髮の
毛を
最惜しげもなく
引つめて、
銀杏返しのこはれたるやうに
折返し
折返し
髷形に
疊みこみたるが、
大方横に
成りて
狼藉の
姿なれども
柳屋は
淺間な
住居、
上框を
背後にして、
見通の
四疊半の
片端に、
隣家で
帳合をする
番頭と
同一あたりの、
柱に
凭れ、
袖をば
胸のあたりで
引き
合はせて、
浴衣の
袂を
折返して
つい
家が出にくいと
云ふだけの事である。
長吉は
直様別れた
後の
生涯をこま/″\と書いて送つたが、
然し待ち
設けたやうな、
折返したお
糸の返事は
遂に聞く事が
出来なかつたのである。