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てうづだらひ
おつたは
汗沁みた
手拭を
頻りにごし/\と
揉み
出して
首筋のあたりから一
帶に
幾度となく
拭つて
手水盥の
水を
換へた。
空に
冴えた
月は
放棄してある
手水盥を
覗いては
冷かに
笑うて
居る。
彼等が
餘りに
暇どつて
居れば
月はこつそりと
首を
傾けて
木の
葉の
間から
覗いて
見る。
おつたは
開いた
儘の
洋傘を
栗の
木の
側へ
仰向に
置いて
默つて
井戸端へ
行つて
手水盥に一
杯の
水を
汲んだ。
私の直ぐ上は銀さんといふ兄貴で、この銀さんが
洗手盥を使つた後では私は
面も洗へませんでした。