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てうこくか
仕舞には
足が
痛んで
腰が
立たなくなつて、
厠へ
上る
折などは、やつとの
事壁傳ひに
身體を
運んだのである。
其時分の
彼は
彫刻家であつた。
双の
玉の
乳房にも、
糸一条の
綾も
残さず、
小脇に
抱くや、
此の
彫刻家の
半身は、
霞のまゝに
山椿の
炎が
𤏋と
搦んだ
風情。
嫁の
姿で
彩色しては、
前後左右、
額縁のやうな
形で、
附添つて、
木を
刻んで
拵へたものが、
恁う
行くものか、と
自から
彫刻家であるのを
嘲ける
了見。