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しよしう
初秋の
洪水以來河の
中央には
大きな
洲が
堆積されたので、
船は
其の
周圍を
偃うて
遠く
彎曲を
描かねば
成らぬ。
と見る
間もなく
初秋の
黄昏は幕の
下るやうに早く夜に
変つた。流れる水がいやに
眩しくきら/\光り出して、
渡船に乗つて
居る人の形をくつきりと
墨絵のやうに黒く
染め出した。
初秋の
風が
吊放しの
蚊帳の
裾をさら/\と
吹いて、
疾から
玉蜀黍が
竈の
灰の
中でぱり/\と
威勢よく
燃える
麥藁の
火に
燒かれて、
其の
殼がそつちにもこつちにも
捨てられる。