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こゝろづく
吉原へ
勤め奉公に
遣れたとは扨も/\
悼はしき事如何に
昔しの恩あればとて夫程までに御夫婦が御
心盡しを
成れしものを
送りしに
夫の
忌日もいつしか八年跡の
空とぞ
過行ける道之助
今年十歳に成けるに親は無とも子は
育つとやら母の手一ツに
育て
揚たる子ながらも
生れ付ての
發明者殊に
幼稚き心にも母が
心盡しの程を
彼は
此までの
心竭しを
勘次に
奪はれたやうで、ふつと
不快な
感じを
起したのである。
彼はお
品がこつそり
蒲團の
下へ
入て
呉れた
煎餅を
噛つたりして二三
日ごろ/\して
居た。
其の
頃は
駄菓子店も
滅多に
無かつたので
此れ
丈のことがお
品には
餘程の
心竭しであつたのである。