)” の例文
治良右衛門の命令に、ねて手筈が極めてあったのか、鮎子の手に白刄はくじんがひらめいて、空中梯子の二本の繩が、プッツリ切断された。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もと/\二人ふたりでする事を一人ひとりねる無理な芸だから仕舞には「偉大なる暗闇くらやみ」も講義の筆記も双方ともに関係が解からなくなつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
をりから、従弟いとこ当流たうりうの一とゝもに、九州地しうぢ巡業中じゆんげふちう留守るすだつた。細君さいくんが、その双方さうはうねて見舞みまつた。の三めのときことなので。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御足労、痛み入りますが、今生こんじょうのごあいさつをね、ちと申しあげたい儀もございますので、お矢倉の上までお運び願いとう存ずる
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
所が最後に一つ、今度はまだ十三四の弟子が、やはり地獄變の屏風の御かげで、云はば命にもかゝはねない、恐ろしい目に出遇ひました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ねて、計画をしてあった屈竟くっきょうの隠れ場所に、ゴロンと横たわったまま、昼といわず夜といわず、睡眠病息者のように眠りつづけていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
モー一つは結婚問題、即ちこれは僕の方からねて子爵へ申出して承諾を得ている事だが、あの玉江嬢を君にもらってくれ給えというのだ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大井は酔人すゐじんを虎がねるやうに、やゝ久しく立ちすくんでゐたが、やう/\思ひ切つて、「やつ」と声を掛けて真甲まつかふ目掛めがけて切りおろした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
到着せしは黄昏こうこんの頃なりしが、典獄はねて報知に接し居たりと見え、特に出勤して、一同を控所に呼び集め、今も忘れやらざる大声にて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
心配していた山鹿は、幸い在宅しているらしく、呼鈴よびりんを押すとばあやが出て来た。ねて打合せたように、鷺太郎を残すと二人は物かげにかくれた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そのとき問答もんどう全部ぜんぶをここでおつたえするわけにもまいりねますが、ただあなたがた御参考ごさんこうになりそうな個所ところは、るべくもれなくひろしましょう。
ねてから御指導によって研究致しております精神科学的犯罪の好研究材料と信じまして、一ツの事を三ツも四ツもの各方面から調査致しまして
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よく見れば大なる坊主なり。やがて小屋の中に入り来たり、さも珍しげに餅の焼くるを見てありしが、ついにこらえねて手をさし延べて取りて食う。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
アンドレイ、エヒミチはれい気質きしつで、それでもとはね、ついにまた嫌々いやいやながらワルシャワにもった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
フランスおよびフランス人をよく知るぼくには——もちろんフランス人にも日本人として僕が同感しねる性情も多分たぶんにありますが——それが実に明白に理解されます。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まずまちさかに一けん見世物小屋みせものごやをこしらえて、文福ぶんぶくちゃがまの綱渡つなわたりとかれおどりのをかいた大看板おおかんばんげ、太夫元たゆうもと木戸番きどばん口上こうじょういを自分じぶん一人ひとりねました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
うつかり金の話をすると、お靜の髮の物までもねない、錢形平次の氣性が、八五郎に取つては、嬉しいやうな悲しいやうな、まことに變てこなものだつたのです。
留守に女房が、教会堂の留守をね、翁の世話をしている。とはいえ決して翁はこの女房の世話にならなかった。食物たべものから、衣服の事すべて自分のことだけは自分でした。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
半之助方小僧こぞうぶるえしつつ、酒一斗はとても入りね候と返答へんとういたし候ところ、山男、まずは入れなさるべく候として申し候。半之助も顔色青ざめ委細いさい承知しょうちと早口に申し候。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
法王の御殿ごてんが峰の上にあるからで、この法王の宮殿は宮殿なり寺なりまた城なり、即ち一つで三つをねて居るというてよろしい。城の建て方としてはチベット第一流である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
高慢なことといったら、人が面白おもしろいっていってくれれば、自殺でもしねませんからね。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
踊子をどりこさそ太鼓たいこおとねてした。勘次かんじ蚊燻かいぶしの支度したくもしないでこん單衣ひとへへぐる/\と無造作むざうさに三尺帶じやくおびいて、雨戸あまどをがら/\とはじめた。さうして
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
同盟罷工どうめいひこうねまじき有様ありさまに至りたるがごとき、かかる場合に於て、予も幾分いくぶんか頭痛を感ずることあるも、何ともなきを仮粧かそうしたり、また土用中なるにもかかわらず寒気凜冽りんれつにして
ひやりと頸筋くびすじに触れたものがある、また来たかとゾーッとしながら、夢中に手で払ってみると、はたせるかな、その蝶だ、もう私もねたので、三ちょうばかり、むこずにけ出して
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
これ日本にほんの事で、或旅僧あるたびそうたうげえてますと、寒風かんぷうはげしくフーフーツ吹捲ふくまくりますのでたまねて杉酒屋すぎさかやといつて、のきしたに杉を丸く作つて、出してありまする居酒屋ゐざかや飛込とびこんで、僧
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたくし幾度いくたびくちひらきかけたが、此時このとき大佐たいさ顏色がんしよくは、わたくし突然にはか此事このことねたほど海圖かいづむかつて熱心ねつしんに、やが櫻木大佐さくらぎたいさと、その海底戰鬪艇かいていせんとうていのにあひふべきはづの、橄欖島かんらんたう附近ふきん地勢ちせい
今日けふ郡司大尉ぐんじたいゐ短艇遠征たんていゑんせいかうを送るに、ねて此壮図このさうと随行ずゐかうして其景況そのけいきやうならびに千島ちしま模様もやうくはしくさぐりて、世間せけん報道はうだうせんとてみづから進みて、雪浪萬重せつらうばんちよう北洋ほくやう職務しよくむためにものともせぬ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
次ぎの停車場ステーシヨンまではやゝ遠かつた。其處そこに着くのを待ちねて、小池はお光とゝもに、小砂利こじやりを敷き詰めた長いプラツトフオームへ下りると、ざく/\と小砂利を踏みつゝ車掌しやしやうに近附いて
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
わたしも安堵して、この世を去りねまするに、らに、母は己の愛着のあまり、死出しでの姿にかうるに、この様な、わたしが婚礼の姿をそのまま着せてくれまして、頭の髪も、こんな高田髷たかたまげうて
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
無益の彫刻藻絵そうかいを事とするをとどめたるが如き、まことに通ずることひろくしてとらえらるゝことすくなく、文武をねて有し、智有をあわせて備え、体験心証皆富みて深き一大偉人たる此の明の太祖
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
コンな古臭い攘夷政府をつくって馬鹿な事を働いて居る諸藩の分らず屋は、国を亡ぼしねぬ奴等やつらじゃとおもって、身は政府に近づかずに、ただ日本に居て何かつとめて見ようと安心決定けつじょうしたことである。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
およそ法螺ほらとはえんの遠い孔子がすこぶるうやうやしい調子でましてこうした壮語をろうしたので、定公はますます驚いた。彼は直ちに孔子を司空に挙げ、続いて大司寇だいしこうに進めて宰相さいしょうの事をもらせた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それをくと、とうさんは半信半疑はんしんはんぎのままで、むすめそばはなれた。日頃ひごろかあさんのやくまでねて着物きもの世話せわからなにから一切いっさいけているとうさんでも、そのばかりはまったとうさんのはたけにないことであった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おれと一しょにねるというのなら、おれは誰とでも寝よう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
主人愛客兼愛酒 主人 客を愛しねて酒を愛し
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
御依頼ごいらい唱歌しやうかけん我等われら三人さんにんとも同意どういいたさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
……ついては、お祝の辞を今日こんにちこれへまかりくだりました私は、細川和氏と申す者。以後なにとぞ、ご昵懇じっこんを賜わりますように
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
所が最後に一つ、今度はまだ十三四の弟子が、やはり地獄変の屏風の御かげで、云はゞ命にもかゝはりねない、恐ろしい目に出遇ひました。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
不安ふあんをりだし、御不自由ごふじいうまことにおどくまをねるが、近所きんじよけるだけでもみづりない。外町ほかまちかたへは、とつて某邸ぼうていことわつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴方あなたのお名前はねてよく知っていましたよ。今度の事件はまるで、貴方に挑戦しているようなもので、実にうってつけの大事件ですなア」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
女はしたから見上みあげた儘である。手もさない。身体からだうごかさない。かほもとところに落ちけてゐる。男は女の返事さへくはねた。其時
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その頃から、彼女は、ショールのことを口にせぬ日がない程に、それを彼女自身のものにするのを、つまり月給をもらう日を待ちねていたものだ。
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
じいさんのおはなしは、なにやらまわりくどいようで、なかなか当時とうじわたくしねたことはもうすまでもありますまい。
アンドレイ、エヒミチはれい氣質きしつで、れでもとはね、つひまた嫌々いや/\ながらワルシヤワにもつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
妾はよい都合と喜びまして、ねてから髪毛かみの中に隠しておいた宝蛇を、美紅姫の懐に押し込みました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
留置とめおきあづけなどゝ云ふことにせられては、病体でしのねるから、それはやめにして貰ひたい。倅英太郎は首領の立てゝゐる塾で、人質ひとじちのやうになつてゐて帰つて来ない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
時には夜ふけて寝酒の微酔でやつて来る時さへあつたのに、江戸への出入も店の商売もとかく怠り勝ちになつたといふ此頃このごろの忙しさとは何であるか、老女には判りねた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
ねて板伯より依頼なし置くとの事なりし『自由燈じゆうのともしび新聞』記者坂崎斌さかざきさかん氏の宅に至り、初対面の挨拶を述べて、将来の訓導を頼み聞え、やがて築地つきじなる新栄しんさかえ女学校に入学して十二
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ばん料理れうり使つか醤油しやうゆるので兩方りやうはうねて亭主ていしゆ晝餐休ひるやすみの時刻じこく天秤てんびんかついで鬼怒川きぬがはわたつた。村落むらみせでははずに直接ちよくせつ酒藏さかぐらつたのでさけ白鳥徳利はくてうどくりかたまでとゞいてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やはりこの鳥の雨を待ちねるがごとき啼声を説明している(『小谷口碑集』)。