鳶頭とびがしら)” の例文
火消し番所が見つかった以上、鳶頭とびがしらの金助はさらに手間暇を要せず居どころが判明したものでしたから、右門はまず在否を尋ねました。
その席亭の主人あるじというのは、町内の鳶頭とびがしらで、時々目暗縞めくらじまの腹掛に赤いすじの入った印袢纏しるしばんてんを着て、突っかけ草履ぞうりか何かでよく表を歩いていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「清五郎さん——いやあの人は呑んでゐない。鳶頭とびがしらだつたかも知れませんね、まだ呑み足りない顏をして居ましたから」
そゝっかしやの鳶頭とびがしら勝五郎でげすから、ハッと驚きましたが、まだしも伯父の晋齋でないだけが幾らか心に感じ方が少ないと申すようなものではあるが
吉原の鳶頭とびがしらのおかみさんで、家の者はこの人のことを、「ばあちゃん。」と親しく呼び馴染んでいた。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
りが後藤だとか、毛唐だとか、縁頭ふちがしらが何で、鳶頭とびがしらがどうしたとか、目ぬきがどうで、毛抜がこうと、やかましい能書のうがきものなんでございましょうが、何をいうにも三下奴
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
本町の鳶頭とびがしらから目明しの助二郎がどんな話を聞いたか、それを青木功之進にどう告げたか、栄二はまったく知らなかったが、訊問じんもんする青木の口ぶりから察すると、栄二は住所も名も職も云わず
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その街に面した処に小さい町家が二軒ある。一つは地所も家も高木のもので、貸店かしだなになって居り、一つは高木の地所に鳶頭とびがしらの石田が家を建てて住んでいる。ぎんは取引が済んでこの貸店に移った。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
此地の鳶頭とびがしらしげさん來りて轉居の荷づくりをなす。
荷風戦後日歴 第一 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
予定の通り引渡しが夕方あったとすると、千両箱の中から砂利や古金が出て来た時、一番先に疑われるのは、何といっても源助と鳶頭とびがしらの辰蔵です。
罪は浅草三番組鳶頭とびがしらの音蔵ごろし、下手人はいま呼びたてた同じ浅草奥山の小屋芸人やまがら使いのお駒でした。
ある日、吉原公園の池の際にあった吉原の鳶頭とびがしらの家の前で友達と遊んでいたときに、私はそこに転してあった土木作業に使う鉄の重石おもしのようなものを、過って右足のうえに落した。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
豫定の通り引渡しが夕方あつたとすると、千兩箱の中から砂利や古金が出て來た時、一番先に疑はれるのは、何といつても源助と鳶頭とびがしらの辰藏です。
よいのうちからひゅうひゅうとからッ風が吹き荒れて、今晩あたり出火したら、と大びくびくのところへ、場所もあろうに鳶頭とびがしら金助の家の前で、お隣が大火事だア
だが、遠縁のかゝうど清五郎と、鳶頭とびがしらの文次は早くも橋番所に駈けて行きました。その間に柳屋の幸七は
いましがた出入りの鳶頭とびがしらが参りましてな、つい十日ほどまえにてまえのせがれが嫁をめとりましたので、その祝儀じゃと申しまして、この新画の幅をくれたものでござりますから
「さう言はず行つて來るが宜い。歸りには鳶頭とびがしらの家へ寄つて、道具を借りて來るんだ。てこつちすきだ」
人手にかかってふた月あまり、——存生中は、三番組鳶頭とびがしらとして世間からも立てられ、はぶりもよかったにしても、死んでしまってはそういつまでも同じはぶりがつづくはずはない。
「そう言わず行って来るがいい。帰りには鳶頭とびがしらの家へ寄って、道具を借りて来るんだ。てこつちすきだ」
「伝六! 町内の鳶頭とびがしらをたたきおこして、わけえ者を五、六人借りてこい」
「他に誰か、その男に氣の付いた者はないのかな、家の者は兎も角、——鳶頭とびがしらなどはどうだらう」
江戸ならば先ず、町の兄哥あにい鳶頭とびがしらとでも言うところに違いない。
銭形の平次、近江屋治兵衛、それに番頭が一人、鳶頭とびがしらが加わって橋場の寺へ駆け付け空柩からひつぎを葬った墓を見ると、巧みに誤魔化ごまかしてはありますが、発掘した形跡は疑うべくもありません。
世話人は巴屋の番頭手代に、町内の鳶頭とびがしら、臨時にかり集めた人足など、土間に積んだ二三十俵の白米を一俵ずつほぐすと、順々に入って来る女子供へ、ますで量って威勢よくけてやっております。
町内の鳶頭とびがしらは太鼓判でも何でもしさうな勢ひでした。
町内の鳶頭とびがしらは太鼓判でも何でもしそうな勢いでした。