駄法螺だぼら)” の例文
川中島の合戦のごとき、今日の歴史家が或いは小幡勘兵衛の駄法螺だぼらだろうと考えている物語までを、事も細かに叙述するを常とした。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こういう人物の習いとして、苦しい懸け引きの必要上、大仰おおぎょう駄法螺だぼらを吹いたこともあった。他人に対して誠意を欠くこともあった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
先日の話は嬉しがらせの駄法螺だぼらだろう。常識で考えてみても分かるが、あの狂暴な羆がちょいとのことで、君らの手に入らないのは知れている。
香熊 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
これでまた、趣味と駄法螺だぼらと洗練された技巧とにみちた、三百ペエジが読める。ああ、おれはおれの生活を、実に意のままにととのえたものだ。
道化者 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
『ええ、ろくでもない、幾世紀もかかって仕上げたような顔をしているが、その実、駄法螺だぼらだ、荒唐無稽だ!』こうした考えが彼の頭をかすめた。
それで私は、わざと貴方に感付かれないように横浜の天洋ホテルでお眼にかかったのです。あの時に申上げたのは皆私の駄法螺だぼらだったのですが……
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
が、いい加減な駄法螺だぼらを聞かせられて、それで黙って恐れ入っては、制服の金釦きんボタンに対しても、面目が立たない。
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この自称飛行家は奇妙な事に支那そば一杯と、老酒ラオチューいっぱいで四五時間も駄法螺だぼらを吹いて一円のチップをおいて帰って行く。別に御しゅうしんの女もなさそうだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
りどころのない駄法螺だぼらなので、それをいかにももっともらしく、真顔まがおを作って話すというのは、どうやらお品に弱点を握られ、今にもそこへさわられそうなのが
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
書を読めば万事につけて中道を失ひ駄法螺だぼらを生涯の衣裳となし、剣を持てば騎士となつておみなごのために戦ふけれども連戦連敗、わが恋の報はれたるためしはない。
朴水の婚礼 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
学校で訓示演説でもする事があつたら、ブライアン氏並に駄法螺だぼらと豪傑笑ひの効能でも述べ立てて
しまいには『おや、大将、また駄法螺だぼらを吹きはじめたな』と呟やいて、さっそく退散してしまう。
「今度は実際恐れ入りました。お母さんだっていつもの駄法螺だぼらだと思っていたんです」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もともと出鱈目でたらめ駄法螺だぼらをもって、信条としている彼の言ゆえ、信ずるに足りないが、その言うところによれば、彼の祖父は代々やり一筋の家柄で、備前岡山の城主水野侯に仕えていた。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それは衒学げんがく的で、冗漫で、古典的で、叙情的で、気取りすぎた、嫌味いやみたらしい、下等なものであって、外国的な調子をもってるように思われる、駄法螺だぼら穿うがちや露骨や機知などの混和だった。
言ってることがわかってるんでしょう、そのばかばかしい一口話がまっかな嘘だってことが。いったいあなたはなんのためにそんな駄法螺だぼらを吹くんです?
... 駄法螺だぼらはよせ!」ここで正雪ギロリと睨み、「それに」とトンとむちを突いたが
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いや妖怪か狒々ひひかまたは駄法螺だぼらかであろうと、勝手な批評をしても済むかも知れぬが、事例は今少しく実着でかつ数多く、またそのようにまでして否認をする必要もなかったのであります。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
駄法螺だぼらを吹いたものだが、今日ではそんな言葉に騙される人はあるまい。
海豚と河豚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
さうすれば、私は至極しごく月並つきなみに、「書きたいから書く」と云ふ答をします。之は決して謙遜けんそんでも、駄法螺だぼらでもありません。現に今私が書いてゐる小説でも、正に判然と書きたいから書いてゐます。
「何に、頭は確かだよ。口から出まかせの駄法螺だぼらを吹くんだ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「エッ駄法螺だぼら。あれはみんな嘘で……」
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そのことならもうさっき言ったじゃないか、駄法螺だぼらばかり吹いていないで、証拠を言ってみろ!」
「親父め到頭駄法螺だぼらを吹き当てたよ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
駄法螺だぼらを吹くことも出来るのである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)