飯山いいやま)” の例文
飯山いいやま正受しょうじゅ老人は、群狼の中で坐禅をしたということを米友は知らないが、これは油断がならない。見廻せば前後茫々たる川中島。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
奥州から越後の新発田しばた、村松、長岡ながおか小千谷おぢやを経、さらに飯山いいやま、善光寺、松本を経て、五か月近い従軍からそこへ帰って来た人がある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こゝにお話は二つに分れまして寛政九年八月十日の事でございますが、信州水内郡みのちごおり白島村しろしまむらと申す処がございます。是は飯山いいやまの在で山家やまがでございます。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
閏四月幕府脱走の一軍が大鳥奎介おおとりけいすけを首将となし信州飯山いいやまに拠り東山道より名古屋を襲わんとする風聞があったので
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼もまた流浪るろうして、伯耆国ほうきのくにの横田内膳ないぜん飯山いいやま城に身をよせていたが、偶〻たまたま、その内膳は、主筋にあたる中村伯耆守ほうきのかみに殺害され、飯山城は伯耆守の手勢にとり囲まれるところとなった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生漉紙きずきがみで一番優れたのを作るのはおそらく飯山いいやま近くの「内山紙うちやまがみ」でしょうか。下高井郡豊郷とよさと村坪山などで産します。これに劣らないのは大町おおまちの奥の北安曇きたあずみ郡の「松崎紙まつざきがみ」や「宮本紙みやもとがみ」かと思います。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
人参にんじんの栽培は木曾地方をはじめ、伊那、松本辺から、佐久の岩村田、小県ちいさがたの上田、水内みのち飯山いいやまあたりまでさかんに奨励され、それを尾州藩で一手いってに買い上げた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
是は信州飯山いいやまの人で十一の時初めて羽生村へ来て、名主方に二年ばかり奉公している其のうちに、力もあり体格もいゝので、自分も好きの処から、法恩寺村の場所へ飛入りに這入ると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「越後口だって油断はならない。東方ひがしがた飯山いいやまあたりまで勧誘に入り込んでるそうですぞ。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おれは信州飯山いいやまぜえでごぜえますから、めったに来る事もあるめえが、善光寺へ参詣にでも来ることが有ったら是非寄って下せえまし、田舎のこッたから、何も外に御馳走の仕ようがえから
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)