顔面かお)” の例文
旧字:顏面
顔面かおは判らぬが、髪かたちに、それから又身のまわりの品物などを一々肯定こうていしたので、轢死婦人は隅田乙吉の妹うめ子であると断定された。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
顔面かおに千六本の刀痕かたなきず、血に塗れ雨に打たれて人相も証拠も見られないとしるや、二、三寸刺さった青竹を物をも言わず引き抜いて、ざぶり、首を天水桶へ突っ込んだ。
顔面かおのどの部分でも、眠っていないところは無かった。白い腕までも夢を見ていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこへいかりまなじりげた、一人ひとりわかおんなあらわれて、口惜くやしい口惜くやしいとわめきつづけながら、くだんおとこにとびかかって、頭髪かみむしったり、顔面かおっかいたり、あしったり、んだり
「ヤッ、変だぞ、変だぞ」と、断水坊も将棋指す手を止め、この血は鼻から出たのであろうと、二人は顔面かおはいうに及ばず、全身残りなくしらべてみたが、どこからも血の出た気勢けはい微塵みじん程もない。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
然し非常な能弁家で、彼の舌の先から唾液つばを容赦なく我輩の顔面かおに吹きかけて話し立てる時などは滔々滾々とうとうこんこんとして惜い時間を遠慮なく人に潰させてごうも気の毒だと思わぬ位の善人かつ雄弁家である。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
……瀬戸物のように血の気をうしなった顔面かお一パイに
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……ああ、年齢としですか。それがどうも明瞭めいりょうでありませぬ。なんしろ、顔面かお滅茶滅茶めちゃめちゃにやられてしまったものですからネ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いくらひとあるきをさせてある妹だからといって、顔面かお粉砕ふんさいしてはいるが、身体の其の他の部分に何か見覚えの特徴があったろうし、また衣類や所持品が同じだといっても
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)