ころお)” の例文
月の上るころおい、水辺の森に来て、琴を鳴らし、ああ、くびに掛けたる宝玉たまを解いて、青年わかものちぎりを結ぼう。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やが嫁入よめいり行列は、沈々ちんちん黙々もくもくとして黒い人影は菜の花の中を、物の半町はんちょうも進んだころおい、今まで晴れていた四月の紫空むらさきぞらにわかに曇って、日があきらかに射していながら絹糸のような細い雨が
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
この死骸を葬る時、疾風一陣土砂をいて、天暗く、都の半面が暗くなって、矢のごとき驟雨しゅううが注いだ。ひつぎは白日暗中を通ったが、寺に着くころおいには、ぬぐうがごとき蒼空あおぞらとなった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
摺抜すりぬけて駈出かけだしもしかねない様子に見え、左に、右に、そのおもてを背けたが、梓の手と、声と、ことばと、真心は、ますます力がこもったから、身も世もあらず、動きもならずいうこと、ここに到るころおいの
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)