べん)” の例文
清吉はさう言つて、草履ざうりを突つかけるのももどかしさうに、堀割をへだてた材木置場の方へ行きました。其處へガラツ八に先べんをつけられるのを恐れる樣子です。
それもたいがい大徳寺に参禅さんぜんしていたもので、ひとたび国許から合戦の通知をうけるや否、馬に乗って一べん戦場へ駆け、また一戦終ると、禅のゆかに姿が見られたとは
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とかくは馬蹄ばていちりまみれてべんぐるのはいにあらざるなり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は、貂蝉をしかと抱いて、乱軍の中を馳け出し、自分の金鞍きんあんに乗せて、一べん、長安へ帰って来た。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御者は見も返らず、勢めたる一べんを加えて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも、ここまで来ると、敵国長安の府も潼関どうかんも、また都洛陽らくようも、一べんすでに指呼しこのうちだ。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど刹那には、本能的な一べんがビシッと馬腹を打っていた。そして飛鳥のようなひるがえりを見せたと思うと、城壁の蔭からそれを狙ッて石砲の石弾がドドドッと撃ち出された。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徐庶は、最後の拝をして、一べん、飛ぶが如く、許都の空へと馳け去った。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
べんもとに呼び出して、これを敵のうちへ追い放つなど、千変万化、じつに極まりのないもので、宋江が身の護符ごふとしている「天書」の活用も、これには、ほとんど用をなさないからであった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち単福をもって、一躍軍師に挙げ、これに指揮べんを授けて
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに、念願が届いて、ついにわが君に随身の機縁を得、なお素姓も定かならぬそれがしを、深くお信じ下されて、軍師のべんを賜わるなど、過分なご恩は忘れんとしても忘れることはできません。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛は、烈しい一べんの下に、車の輪を鳴らして駈け出した。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奔馬ほんばの脚では一べんの間であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)