非道ひどう)” の例文
宿屋のていしゅの話では、王さまという人は、心のやさしい、それはいいひとで、ついぞ人民に非道ひどうをはたらいたことはありません。
将来有為の男児をば無残々々むざむざ浮世の風にさらし、なお一片可憐かれんなりとのこころも浮ばず、ようよう尋ね寄りたる子を追い返すとは、何たる邪慳じゃけん非道ひどうの鬼ぞやと、妾は同情の念みがたく
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ば今一度、非道ひどうなす訳には尚更行かん……よしよし……俺が一つ談判して来てやろう
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ならば奥へ酒さかなを用意しておけ。奴らもいつか俺にむかって、酒の上だが、今の世の鬱憤うっぷんやら上役人かみやくにん非道ひどうを鳴らしていたことがある。存外、こいつア乗ってくるかもしれねえ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの紂王ちゅうおうにすすめて、百姓ひゃくしょうからおもいみつぎものをてさせ、非道ひどうおごりにふけったり、つみもないたみをつかまえて、むごたらしいしおきをおこなったりした妲妃だっきというのは、わたしのことでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
夜は針箱の底深くおさめてまくら近くおきながら幾度いくたびか又あけて見てようやねむる事、何の為とはわたくしも知らず、殊更其日叔父おじ非道ひどう勿体もったいなき悪口ばかり、是もわたくしゆえ思わぬ不快を耳に入れ玉うと一一いちいち胸先むなさきに痛く
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すこし世間に知られた一家で。一度キの字を出したら最後じゃ。万劫まんごう末代血統ちすじさわる。早い話がせがれや娘の。縁があぶなくなるその上に。近所隣りの目下の連中に。あれは非道ひどうなお金の祟りよ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)