露骨むきだし)” の例文
御前はまだ年が若いから露骨むきだしでも構わないと御思おおもいかも知れないが、世の中はそうは行かないよ。同じ断わるにしても、そこにはね。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
死んでいてくれればいい、という露骨むきだしなことばのかげには、もし生きていてあうことがあれば、殺すのだという意味も、くんでくめないことはないのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
文章はたゞ岩石を並べたやうに思想を並べたもので、露骨むきだしなところに反つて人を動かす力があつたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其處そこ學校がくかうたて決心けつしんかれこゝろわいたのです、諸君しよくんかれ決心けつしんあま露骨むきだしで、單純たんじゆんなことをわらはれるかもれませんが、しかし元來ぐわんらい教育けういくのない一個いつこ百姓ひやくしやうです
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
申してはおごりの沙汰だが、「ことやぞや」ではお懐しいがられたくない、ところへ、六十近いお婆さんだから、懐しさぶりを露骨むきだしに、火鉢を押して乗出した膝が、襞襀捩ひだよれの黒袴くろばかま
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
恋のい——あまりにも露骨むきだしな、われとわがこころの愛憎に驚きながらも、弥生は日夜そのお艶とやらを魔神にかけてのろわずにはいられなかったのだ……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そうして故意に反対の方を見たり、あるいは向うへ二三歩あるき出したりした。それがため、妙に遠慮深いところのできた敬太郎はなるべく露骨むきだしに女の方を見るのをつつしんでいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中折をかぶった男の人柄ひとがらと、世の中にまるでうたがいをかけていないその眼つきとを注意した結果、この時ふと、こんな窮屈な思いをして、いらざる材料を集めるよるも、いっそ露骨むきだしにこっちから話しかけて
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)