露助ろすけ)” の例文
近所の男 (女一へ)この人の旦那ってのは、まだあの、鬚をぴんと生やして、拍車のついた長靴を引きずってる、露助ろすけの憲兵さんかい。
俵に詰めた大豆だいずの一粒のごとく無意味に見える。嗚呼ああ浩さん! 一体どこで何をしているのだ? 早く平生の浩さんになって一番露助ろすけを驚かしたらよかろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そう、では露助ろすけにもらった更紗さらさをM君に見せてあげなさい。M君はあんな布類が大変すきなんだから。」
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
その大兵たいひょう露助ろすけは、小さい日本兵の尖った喧嘩腰けんかごしの命令に、唯々諾々いいだくだくと、むしろニコニコしながら、背後から追いたてられて、便所などに、悠々ゆうゆうと大股にったりしていた。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
東京で製靴せいかの仕事で、時代の新しい生活を切り開き、露助ろすけ向けの靴の輸出を盛大にやっていたのを手寄たより、そこでその仕事をおぼえ、田舎いなかへ帰って小さな店をもっていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ただわずかに、旅館の向い側にある居酒屋の入口に立っていた露助ろすけの百姓が二人、ぼそぼそと蔭口かげぐちをきいただけで、それも、乗っている紳士のことよりも、馬車の方が問題になったのである。
いささかの功績を云い立てにして栄位、栄爵を頂戴して、無駄飯を喰うのを光栄としているような国家的厄介者とは段式が違うんだぞ。日露戦争の時には俺の発明した火薬が露助ろすけにモノをいったんだぞ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
頭の禿げ上った乳っぽい赤らづらの、眼の柔和な、農民風の五十男の露助ろすけが、何か羞恥はにかんだような驚きと親しさを見せながら、立ちあがると私たちへ笑いかけた。ペチカの前にでもかがんでいたのらしい。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
露助ろすけに見られて恥ともいえよう。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
露助ろすけが大連を引上げる際に、このまま日本人に引渡すのは残念だと云うので、御叮嚀ごていねいに穴を掘って、土の中にめて行ったのを、チャンが土のにおいいで歩いて、とうとう嗅ぎあてて
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「アハハハハ。済まん済まん。余計な心配かけて済まん。俺の動脈瘤は満洲直輸入だ。大原大将閣下の護衛で哈爾賓ハルピンに行った時に、露助ろすけの女から貰った病毒に違いないのだよ。アハハハ。自業自得だ。……しかし……よく云ってくれた」
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)