雑多ざった)” の例文
旧字:雜多
何れの信仰でも雑多ざったな信者はある。世界の信者が其信仰を遺憾いかんなく実現したら、世界はとうに無事に苦んで居るはずだ。天理教徒にも色々ある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
疾駆する電車、自動車、自転車、貨物自働車、その間を縫ってつづく人の流れ、それに伴奏する建物だの広告塔だのの、雑多ざったな色彩、雑多ざったな様式。
上野界隈 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「うむ、お城のご普請中ふしんちゅうをつけこんで、雑多ざったなやつがまぎれこむようすじゃ。びしびしとめつけて白状はくじょうさせい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はなはだしきは全くその意味をことにして居るのもあり、また一つの訳本に出て居る分がほかの本には出て居らないのもあり順序の顛倒てんとうしたのもあるというような訳で種々雑多ざったになって居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
生きているひとなら力になりそうなものだが世事せじ雑多ざっただ。生きている同士はかえって、ほんの心の友にも力にもなれない。——そこへゆくと、古人にそれを
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂昇ろしょう大隈おおすみ加賀かが宝生ほうじょう哥沢うたざわ追分おいわけ磯節いそぶし雑多ざったなものが時々余等の耳に刹那せつな妙音みょうおんを伝える。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
烏帽子えぼしの老人、市女笠いちめがさの女、さむらい、百姓、町人——雑多ざったな人がたかって、なにか評議ひょうぎ最中さいちゅうである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かきの木から飛びおりた竹童ちくどうは、はじめてそこに人あるのを知って、軒先のきさきに近より、家の中をのぞいてみると、おくには雑多ざった蚕道具かいこどうぐがちらかっており、土間どまのすみのべっついのまえには
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)