際限きり)” の例文
... 其時俺が、「左様さう心配した日には際限きりが無え。」と笑つたことサ。はゝゝゝゝ。』と思出したやうに慾の無い声で笑つて、軈て気を変へて
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「何うかしてあげれば好いって、何うすることも出来やしない。際限きりがないんだもの。」と、お宮は、怒るように言ったが
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
しかしそれでは際限きりがない。こんな不安な状態がいつまでも続いていては、周囲の者どもの迷惑ばかりでなく、第一に本人自身の命がたまるまい。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いくら、こうしていても、際限きりがないので、私は仕方なく、またもう一度、三角暗礁へ帰ることにしようと思った。謎は、ついに解けそうもないのであった。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「まあ内の人はどうしたんだろう。朝寝坊にも際限きりがあるよ、どれ行って起こしてやろう」
善悪両面鼠小僧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
踏みこまねば際限きりがない! と気負きおいたった栄三郎が、泰軒にあとを頼んで戸のあいだに身を入れたかんぱつ! 内側に待っていた氷剣、宙を切って栄三郎の肩口へ! と見えた瞬間しゅんかん
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
高山の夕にも亦やんごとないそうの衣にもある水晶にも宿やどる紫、波の花にも初秋の空の雲にも山の雪野の霜にも大理石にもかばはだにも極北の熊の衣にもなるさま/″\のしろ、数え立つれば際限きりは無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「斯うしていても際限きりがないから、……私、最早もう帰りますよ。じゃこれで一生会いません。」と、あたりを憚るように、低声こごえで強いて笑うようにして言った。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
彼が客に見せたいと思う古文書なぞは、取り出したら際限きりのないほど長櫃ながびつの底にうずまっている。あれもこれもと思う心で、彼は奥座敷から古い庭の見える方へ行った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『いえ、私だつて其様そんなことは解りません。』と銀之助は笑ひ乍ら答へた。『何とでも言はせて置いたら好いでせう。其様な世間で言ふやうなことを、一々気にして居たら際限きりが有ますまい。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「お婆さん、そう貴女あなたのように心配したら際限きりが有りませんよ。今日英学でもらせようと言うにはほかに好い学校が無いんですもの。捨吉の行ってるところなぞは先生が皆亜米利加アメリカ人です。朝から晩まで英語だそうです」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)